日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「気候変動がもたらす健康被害」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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今季で一番強い寒波の影響で、今年のクリスマスシーズンは日本各地の広い範囲で大雪による影響が相次いでいます。車の立ち往生やこの寒さの中の停電など、様々な影響が出ていることを報道で知るたびに心が痛みます。
寒波を襲っているのは日本だけではないようです。気象当局が「命に危険が及ぶほど」と警戒を呼びかけるほどの寒さをもたらす記録的な寒波が、アメリカを直撃しています。報道によると、アメリカの広範囲で気温が氷点下に達しており、中部から東部にかけて厳しい寒波による大雪や強風のために空の便の欠航や大規模な停電、車両事故など多くの影響が出ているといいます。
ボストンに住む友人は、氷点下10度というあまりに寒すぎる気温のせいで外出することが困難ためであったため、友人宅で行われる予定だったクリスマスパーティーに参加するのを取りやめたそうです。そして年内中に外出しなくてもすむように、先週のうちに大型スーパーマーケットで食材を大量に買いだめしておいたと彼女は言います。
地球温暖化による気候変動は、私たちを取り巻く環境や健康に悪影響を及ぼしていることが既に報告されています。熱波や寒波、嵐や山火事、洪水や干ばつを引き起こす異常気象の発生頻度や重症度は年々増加傾向にあります。ここ数年、夏の異常な暑さと冬の寒波の到来による寒さと大雪の影響、甚大な被害をもたらす台風の列島縦断など、気候変動による影響を実感している人も少なくないのではないでしょうか。
ヒトの手が加わったことによる気候変動や影響に関して、科学的・技術的・社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として設立された組織に国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)があります。各国政府を通じて推薦され参加した科学者が、気候変動に関する科学研究から得られた最新の知見を5年から6年ごとに評価して評価報告書にまとめて公表しています。