日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ罹患後に長く続く症状とそれに対する偏見」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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私事ではありますが、10月下旬にコロナに初めて罹患しました。喉が痛いなと思っているうちに、声が出にくくなりました。次第に、痰が絡むようになり、息苦しさを少々感じるようにもなりました。お腹を下す日も数日ありました。幸い、37度程度の微熱で高熱は認めなかったものの、若干のだるさと寒気を感じる日が続きました。
そこまで症状はひどくなく、悪化することもなく一週間が経過。スッキリと良くならなかったため「おかしい……」と思った私は、自宅に確保してあった抗原検査でインフルエンザとコロナの罹患の有無を確認することにしました。コロナワクチンの3回目までの追加接種を済ませていたこと、発熱外来をこなすもこれまでコロナに罹患しなかったことから、コロナを疑ってはいませんでした。
検査の結果は「コロナ陽性」。陽性の結果を受け、一瞬頭が真っ白になりました。けれども、一連の症状がコロナによるものであったことが分かってからは、対処法が明確になり不安は軽減しました。改善するまで休養をとることに専念しました。幸い、倦怠感や悪寒はそれから数日でなくなり、痰が絡む症状だけは2週間ほど続いたものの、重症化せずに症状は改善し、幸いコロナ罹患後に続く症状もなく過ごすことができています。
発熱外来を含む内科外来には、コロナに罹患した後に続く症状を主訴に受診される患者さんが少なくありません。ドイツのウルム大学のPeter氏 らが、コロナ感染から半年~1年が経過する50,457人に案内を出して回答した12,053人を対象に行った調査によると、体調や労働能力を損ねる上で最も影響しているのは疲労や認識機能障害であり、日常生活を少なくとも中程度に害する新たな症状をもたらし、体調や労働能力を2割以上損なわせている長患い(post-covid syndrome)を対象者の29%が被っていることがわかりました。また、回答がなかった人全員が仮に完全に回復していたとした場合、長患いを認めている人の割合は少なくとも6.5%と推定されましたといいます。