こうした物価高対策について石破氏は「一時的な痛み止めにはなる」とした上で、「でも、その効果はずっとは続かない。痛み止めを飲んでいれば病気が治るわけじゃない」と指摘する。そして世界的な円安とそれに伴う物価高について、こう見解を話した。

「物価が上がっても、それ以上のペースで給料が上がっていけばいいが、現状はそうなっていない。では、給料が上がる状態をどうやってつくるのか。まず、企業の利益が株主や経営者に分配される比率を低くして、その分を労働者に回すという労働分配率の是正がひとつ。同時に、労働生産性も上げていく必要があります。アベノミクスの時代は、円安への誘導で輸出産業を復活させ、株価を上げようとしました。しかしそれでは為替を利用して日本製品のディスカウントセールをしているだけで、日本製品の価値が高いから売れたわけではない。やはり、日本製品の付加価値を上げて、それに伴って給料も上げていく好循環をつくらないと、持続的な成長にはつながりません」

 燃料費や食品の値上げで苦しくなる庶民の生活をよそに、岸田首相は増税を見越した防衛費の増額を決めている。防衛力の抜本的な強化に向けて、2023年度から5年間の防衛費を現在の1・5倍超の総額43兆円確保する方針を示した。

 元防衛相として、石破氏はこれにどのような見解を持っているのか。

「当初、岸田総理は防衛費の予算は、中身、規模、財源をセットとして決めるとおっしゃっていた。しかし、突如として、11月末に防衛相と財務相を呼び、GDP(国内総生産)の2%程度に増額するように指示され、最終的に43兆円という数字が出てきました。このプロセスに問題があると思います。本来はまず、防衛力の強化に必要な組織、体制、装備を考え、それを積算して概算を出すべきでしょう。中身を詰めることが何より大事で、それにふさわしい規模はどれぐらいかを吟味する。30兆円、40兆円という予算は、その結果として出てくるものです。だから、必要であればGDPの5%相当ということもありうるでしょうし、必要でなければ1・5%相当ということでもいい。それなのに、最初に予算規模が出てくるというのは、あまり合理的に説明ができるやり方ではない」

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最大の抑止力は自衛隊と米軍の「合同司令部」を持つこと