岸田首相は8日、与党幹部と政策懇談会を開き、防衛費増額の財源として、毎年約4兆円の追加財源が必要だと説明した。基本的には、歳出改革、決算剰余金の活用、防衛力強化資金の創設などでまかなうとしたが、「残りの約4分の1の約1兆円強については、国民の税制で協力をお願いしなければならない」と述べた。こうした状況で、防衛費の中で効率化できるものはないかという議論が一切されていないことに、石破氏は疑問を感じるという。

「日本国産の戦車の値段は、アメリカ製の2倍、ドイツ製の3倍高い。日本の輸送機の値段はアメリカ製の3倍くらいする。日本で製造するC-2という航空自衛隊が保有する輸送機と、それよりはるかに大型で遠くまで飛べるC-17というアメリカの輸送機を比較すると、1トンの物を運ぶ運賃は3倍くらい日本機の方が高くつく。もちろん国産の方が良いが、その負担は納税者にまわってくる。岸田首相は来年1月に訪米し、バイデン大統領と日米首脳会談を行う予定です。防衛費の増額が、アメリカに対する手みやげにつながるようなやり方は、もうやめたほうがいい。結局は国民の負担になるのだから、本当に国益にかなうものを、国益にかなうやり方で調達しなければなりません」

 そもそも、軍備を増強し、自衛隊をより攻撃能力の高い組織にすることが、日本を守ることにつながるのだろうか。

「たとえば『トマホークを多く持てば日本の反撃力は高くなる』と思う人もいるかもしれませんが、トマホークは飛行機と同様の構造なので、時速900キロも出ない。ジェットエンジンで燃料も必要だから、搭載できる爆薬の量も弾道ミサイルに比べれば少ない。どんな抑止力を想定し、どんな反撃力が効果的かということを考えるべきです。たとえば中国に対して最も抑止力になるのは、反撃力の強化よりも、自衛隊と米軍の合同司令部を持つことなのではないかと思います。司令部が合同になれば、『いざとなったら日米は一体となって行動する』というメッセージが強烈に伝わる。逆を言えば、日米合同の司令部がないことが中国に、日米離間のインセンティブを与え、状況を中国に有利にしている。もっとそういう議論をすべきです」

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石破氏が語りだした「旧統一教会」との関係