俳優の佐藤二朗さん
俳優の佐藤二朗さん

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、TAMA映画祭でのスピーチについて。佐藤さんは最優秀男優賞を受賞しました。

【画像】佐藤二朗、仏のような笑顔

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 既報ですが、当コラムの読者諸兄にもしっかりとお伝えしなければと思い。

 映画「さがす」の演技において、TAMA映画祭の最優秀男優賞を頂きました。

 先日、授賞式に出席しまして。

 映画「はるヲうるひと」で、韓国の江陵国際映画祭の最優秀脚本賞を頂いた時は、コロナ禍のため、ビデオコメントによる参加。

 なので「授賞式ってどんな感じなんだろう」という、なんとも頼りない、地に足のつかない心境のまま、出席となりました。

 各賞を受賞した方々が、お一人ずつ登壇して、スピーチをします。

 僕は自分の番が来るまで、楽屋のモニターで皆さんのスピーチを拝見していました。

 同じく映画「さがす」で最優秀新進女優賞を受賞した伊東蒼ちゃんのスピーチなんて、満点。5億点。

 実は当日の朝、蒼ちゃんからメールがありまして。

「今日は授賞式なので、朝からすごく緊張しています。スピーチも何度も練習しています」

 なんと可愛らしく正直なメールでしょう。それに対し僕は、

「大丈夫。その時の気持ちを素直に話せば、それがスピーチになります」

 と、お前は一体ナニ目線なんだという返信をしていたのです。

 そんな蒼ちゃんが5億点。

 ナゾ目線オジサンは果たして何点取ればいいんでしょう。

 そして、これまた映画「さがす」で最優秀新進監督賞を受賞した片山慎三のスピーチ。

「頼む!片山!失敗しろ!」と思っていたのですが(←あのぉ、冗談ですからね)、落ち着いて率直な、片山らしいスピーチ。

 ぐぐぐぅ。アイツら~~、俺を差し置いて素晴らしいスピーチをしやがってぇぇ。

 特別賞の宮本信子さんは、さすがの奥行き、深さ、さらには優しさをも感じさせる、これまた素晴らしいスピーチ。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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