試合終了後にゴミを拾うなど、日本のサポーターのマナーに世界が注目した(写真/アフロ)
試合終了後にゴミを拾うなど、日本のサポーターのマナーに世界が注目した(写真/アフロ)

 サッカーのワールドカップ(W杯)で日本代表が強豪ドイツに大逆転で勝利を収めると、SNSでは歓喜の声で溢れかえった。一方で、会場に集まって日本を応援するサポーターがマスクをしていない様子がたびたび映像に映し出されると、「日本でもマスクは不要だ」「#マスクを外そう」といった書き込みが並んだ。感染症の専門家はどう見るのか。

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 白熱したドイツ戦の最中や終了後に、マスクなしで応援するサポーターの姿を見て、

<カタールは全然マスクしてないね>
<もう日本だってマスクは要らないよ>
<カタールではマスクなしで声援を送れるのに、なんで日本はまだそれができない>

 といったツイートが多数投稿された。W杯をきっかけにマスク着用の考え方を変えるべき、などの意見も飛び交っている。

■「日本はワクチン免疫が主流」

 日本では屋外でのマスクは原則不要となっているが、屋内ではマスクの着用が推奨されている。また、イベントでは収容人数や声出しの制限、マスクの着用が必要とされる。

 いったいカタールの感染状況や対策はどうなっているのか。

 ジョンズホプキンス大学システム科学工学センターのデータによると、感染者数は23日時点で229人。死者は10月24日以降、0人となっている。ちなみに、カタールの人口は約280万人だ。

 マスクについては、先月23日からマスク着用義務を医療施設内と接客業等に従事する従業員に限定している。W杯の会場でもマスクの着用義務はなく、入場制限や声出しの制限もないとされている。

 ポストコロナに日本が乗り遅れているようにも感じるが、感染症対策が専門で、順天堂大の堀賢教授は「日本と外国とでは状況がかなり違う。同じように考えるべきではない」と警鐘を鳴らす。どういうことか。

「ワクチン接種によって獲得する免疫のことを『ワクチン免疫』と呼びますが、日本ではワクチン免疫が主流です。他方で、海外では感染して免疫を獲得する『感染免疫』や、ワクチンと感染の両方による『ハイブリッド免疫』がほとんどで、日本よりもはるかに社会全体で強い免疫を持っていると考えられています。欧米など海外で脱コロナ社会を迎える一方、日本ではまだなのは、この違いからです」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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