三冠王となったが悔しい形でシーズンを終えたヤクルト・村上宗隆
三冠王となったが悔しい形でシーズンを終えたヤクルト・村上宗隆

 第3戦を除いてすべて3点差以内、うち5試合が2点差以内と、今年も接戦が続いた日本シリーズ。昨年と同じオリックスとの戦いに2勝4敗1分で敗れ、ライトスタンドのファンのもとへ挨拶に赴いたヤクルトの高臣吾監督の両眼は、涙に濡れていた──。

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 スタートは悪くなかった。今年もパ・リーグ投手四冠に輝くなど難攻不落と思われたオリックスのエース、山本由伸を第1戦で打ち崩すと、第2戦は9回裏に代打・内山壮真の同点3ランで追いつき、延長12回の末に引き分け。第3戦は、そこまでノーヒットのキャプテン、山田哲人が宮城大弥から先制3ランを放つなど大勝し、あの野村克也監督でも成しえなかった球団史上初の2年連続日本一まで、あと2勝と迫る。

 ところが、そこからまさかの4連敗。敵地のほっともっとフィールド神戸で自身が宙に舞った昨年とは対照的に、本拠地の神宮でオリックスの中嶋聡監督が胴上げされる姿を目の当たりにして、日本一まで上りつめても涙1つ見せなかった指揮官が「悔し涙」にくれた。

 それでも、高津監督の下でチーム一丸となって成し遂げた球団29年ぶりの2年連続リーグ優勝が、色あせることはない。今シーズンの最終成績は80勝59敗4分、勝率.576。ヤクルトが「80勝」の大台に達するのは、野村監督の下で球団記録の83勝を挙げた1997年以来、25年ぶりのことだ。5月の途中からは首位を独走し、8月にはDeNAに4ゲーム差まで詰め寄られたこともあったが、直後の直接対決で3連勝して引き離し、最終的には8ゲーム差をつけた。

 目立ったのは、なんといっても12球団でも屈指の破壊力を誇った打線である。チーム打率.250はリーグ3位ながら、619得点、174本塁打はいずれも両リーグNo.1。ただし、序盤の快進撃を演出したのは、その打線だけではない。月間16勝7敗で初の単独首位に躍り出た5月は、月間のチーム防御率2.25という投手陣の健闘も光った。

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今季の“主役”となった村上宗隆