山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ禍の帯状疱疹への対応」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

*  *  *

「帯状疱疹を予防するワクチンがあると聞きました。接種することはできますでしょうか」最近、外来診療をしているとこのような質問を受けることが増えてきた印象です。

 新型コロナウイルス感染症の流行から2年以上が経過し、様々な合併症を引き起こすことが次第に明らかになってきました。その一つが、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症との合併であり、新型コロナウイルス感染症の感染や新型コロナウイルスワクチンと関連している可能性が指摘されています。

 例えば、ブラジルでは、2017 年から 2019 年の 3 月から 8 月と比較して、2020年の同時期に帯状疱疹と診断された数が35.4%増加していたことが報告されています。また、アメリカの調査では、50歳以上の成人において新型コロナウイルス感染症 と診断された人は、それではない人よりも帯状疱疹の発症リスクが 15% 高かったことが報告されています。

 原因はまだ十分に明らかにされていないものの、新型コロナウイルス感染症による細胞性免疫の低下が水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化の原因の1つであることが指摘されているのです。

 少し前のことにはなりますが、印象深い症例があったので共有したいと思います。「右肩のあたりに水ぶくれみたいなものができたことに気がついたけれど、痛くなかったから様子を見ていたの。そしたら、昨日の夜の急に我慢できないくらい痛くなって……」70代の女性は、診察室に入るなりこう言いました。昨晩、あまりの痛みに我慢することができず、救急外来をしている病院に片っ端から電話をかけ続けたものも、皮膚科の医師が当直していないという理由で受診を断られ、結局受診することができなかったといいます。

著者プロフィールを見る
山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈の記事一覧はこちら
次のページ
この女性が内服していた薬に原因が?