山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ対策への疑問」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

【写真】約3億9千万円の予算を投じてつくられたコロナアプリ

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「まだ到達してはいないが、コロナ感染について終わりが見えてきた」

 世界保健機関(WHO)が2020年3月11日に新型コロナウイルス感染症を「パンデミック(世界的な大流行)」とみなせると表明してから約30カ月が経過した2022年9月14日の記者会見で、テドロス事務局長がこう述べました。

 10月初めに開催される専門家会議で、現在の新型コロナウイルスの感染状況が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たるかどうか協議し、宣言を続けるかどうか判断する予定だと言います。

 夏の流行(第7波)が峠を越えた今、陽性者や濃厚接触者の隔離期間の短縮、「全数把握」の一律見直し、コロナ陽性者の入国者数の上限撤廃や個人旅行客の受け入れ解禁、短期滞在のビザ取得の免除といった水際対策の大幅緩和など、ようやく日本も「withコロナ」へと進み出したと言えるのではないでしょうか。

 しかし、これらの緩和策に対して心にモヤモヤとしたものが「ひっかかる」のはどうしてなのでしょう。

 1つ目は、水際対策の大幅緩和についてです。

 コロナの感染が国内ですでに広がっていたにもかかわらず、入国者数の上限や個人旅行者の入国禁止など厳しい水際対策をし続ける必要があったのでしょうか。どうして、パッケージツアーの外国人旅行客の入国は認め、個人はだめだったのでしょうか。日本人は外国に旅行することが可能なのに、外国人観光客は入国を禁じる必要があったのでしょうか。

 Go To トラベル事業や、県民割、全国旅行支援など、国内での旅行は支援する傍ら、日本人以外の観光客の入国を禁じ、「鎖国」状態にした理由が、私にはわかりません。日本人は入国できるのに、外国人は入国できない、という状況が長らく続いていたことに、私は疑問を感じるのです。政府は水際対策がなぜ必要だったのか、緩和する理由ととともにきちんと説明する必要があるのではないでしょうか。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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