緩和後の羽田空港のニューヨーク便の列
緩和後の羽田空港のニューヨーク便の列

 2つ目は、「通知」によるコロナ対策の変更に関するあり方です。

 9月7日の夜、厚生労働省から、症状のある陽性者や濃厚接触者の隔離期間が10日間から7日間に緩和される旨が「通知」として都道府県に通達されました。

 一夜にして、基準が大幅に変わるという現象を目の当たりにし、厚生労働省が出す「通知」によるコロナ対策のマイナーチェンジのあり方に対し、私は疑問に感じざるを得ませんでした。

 日本の新型コロナウイルス対策は、1998年に公布された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、感染症法)に基づき、厚生労働省や保健所を中心に行われています。変異株の出現や流行の波など、コロナの感染状況は常に一定ではなく、それらの感染状況に合わせて感染症対策を変えねばなりません。

 厚労省は、感染症法に基づく「技術的助言」として位置付けられている「通知」で、コロナ対策を変えています。「通知」には法的強制力はありません。厚労省は、感染症法の主旨と異なる「通知」を出しています。これは、現場を混乱させます。

 本来、感染症法に基づき、感染対策を講じるとするのであれば、その対策を変更するときは法律の改正が必要です。であるにもかかわらず、技術的助言である「通知」を厚生労働省が出すことで法改正をせず、対策を変えているのが、今の日本のコロナ対策の現状です。これは大きな問題です。

 9月中旬、岐阜県にある大垣市民病院では新型コロナウイルスに感染した職員の自宅療養期間を独自に短縮し、国の基準より早く職場復帰させていたことが明らかとなったと報じられました。岐阜県は、感染症法に違反する可能性もあるとみて調査しているそうです。

 厚生労働省から「事務連絡」や「一部訂正」といった表現で「通知」が出すことで感染症法による基準を変更していることと、独自で基準を短縮していたことと、さほど大きな違いはないように感じるのは、私だけでしょうか。

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患者さんの立場に立ち寄り添った対策か?