宮内庁が来年度からSNSを使って情報発信を始めるという。メディアを通さず自ら情報を発信できる便利なツールだが、諸刃の剣。使い方によっては誤ったメッセージを国民に送ることにもなりかねない。宮内庁は、いったいどのような戦略を描いているのか。コラムニストの矢部万紀子さんが考察する。

【写真】愛子さまのブラウス姿がかわいらしい!一家3人でご養蚕の様子

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 宮内庁が来春以降、SNSを始めるという。要員として参事官1人を新設、職員2人を増やすことを2023年度予算の概算要求に盛り込んだのだそうだ。

 アエラ8月1日号に「皇室SNS待ったなし」と書いたのは、何を隠そうこの私だ。型通りの写真をゆっくりゆっくりホームページにアップする。それが通常モードの宮内庁が7月、プライベート感あふれる天皇ご一家の写真5点を公表した。突然のやる気モードに、「もうあと一歩でSNS!」と勝手に励ました。まるで、予言? いいぞ宮内庁、ゴーゴー。

 などとはしゃいでみたが、そうそうたやすい道ではない。誰が何を発信するのかという第一歩が大問題だ。宮内庁職員がゆるゆる発信するのでは現状と大差ないし、かといって皇族自らが発信して炎上したらどうするのか。宮内庁の狙いは、どこにあるのだろう。

 朝日新聞はこの点について、「週刊誌やSNSなどで皇室に関する情報があふれるなか、正しい情報を提供し、誤った情報をただす意味合いもある」と書いていた(8月31日付朝刊)。「正しい情報を提供する」は、わかりやすい。先述した写真がそうだった。

 養蚕にご一家3人が取り組む写真だった。明治以来、皇后に受け継がれてきたのが養蚕だから、私には陛下が「妻の仕事を楽しくサポートする夫」に見えて密かに感動した。積極的な情報提供は、良い波及効果を生む。

 「誤った情報をただす」はそうはいかない。その難しさを一身に体現しているのが秋篠宮家だと思う。21年10月に結婚した長女の眞子さんは、週刊誌報道やネットの書き込みなどで複雑性PTSDになった。紀子さまは、眞子さんよりずっと前からバッシングされている。

 が、2人へのバッシングに宮内庁が抗議したことはない。秋篠宮さまが「反論しない」方針だと知ったのは眞子さん結婚の翌月、秋篠宮さま56歳の誕生日を前に開かれた記者会見でのことだった。秋篠宮さまはこう述べた。「記事の中には創作もあれば正確なことも、両方混ざっているわけですね。一つを採り上げてそれは違うと言うことはできますけれども、そうしたらここも違うし、これは正確だしというのを全部説明していかないと本当はいけないのではないかなと思うのですね」

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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