『ピンストライプ・アレー』が挙げた「WAR」とは、投球(投手の場合)、打撃、走塁、守備を総合的に評価して、「その選手が代替選手に比べどれだけ勝利数を増やせたか」を表す指標。この指標は米データ分析サイト『ファングラフス』と『ベースボール・リファレンス』が提供している。(両者には、数字に違いがあるため、前者を「fWAR」、後者を「rWAR」と区別される。本項では、「fWAR」を使用)

 近年のMVP投票では、この「WAR」が重視される傾向にある。昨年のMVP投票でもこの指標が大きな役割を果たしたとされ、日本でも話題になったのは記憶に新しい。昨年のMVP争いを振り返ると、大谷は投手(3.0)と打者(5.1)それぞれを足したfWAR8.1で、対抗馬のブラディミール・ゲレーロJr.(fWAR6.7)を大きく引き離し、満票MVPに選ばれている。

 では、今年はどうか。『ファングラフス』によるランキング(19日現在)では、ジャッジのfWARは7.5で両リーグのトップ。一方、大谷は投打合わせて6.6。大谷も両リーグ2位だが、昨季よりは低い。もし実際に「WAR」でMVPが決まるなら、現時点ではジャッジになるだろう。つまり、同メディアは、「WAR」指標トップのジャッジを差し置いて、下位チームの選手(大谷)をMVPに推すことが気に入らないようだ。

 しかし、『ピンストライプ・アレー』の主張には、異議が唱えられている。『MLB.com』のマイク・ペトリエロ記者は「WARは(MVP選考の)出発点であるが、エンドポイントではない。またチームが勝っているかどうかは重要ではない」と反論している。

『ピンストライプ・アレー』はペトリエロ記者の反論を受け、翌16日、「チーム成績は関係ない」という部分に同意を示したことを記事に掲載。しかし、同記事には一部のファンから出る「大谷が二刀流で活躍しているから今年もMVPを与えるべきだ」という主張にも納得できない様子をみせた。

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