記事では、「大谷が昨季のような状態が続けば、毎年受賞しても異論はない」としながらも、「今年は単純にそうはなっていない」と反論。「大谷の投打両方をもってしても、今年のジャッジの歴史的な活躍には匹敵しない」とした上で、「MVPはジャッジに贈られるべきだ」と強調した。

 この「二刀流だから毎年MVP、というのは違うのでは」という意見については、次のような反論がある。例えば、大谷好きで知られる『FOXスポーツ』のコメンテーター、ベン・バーランダー氏は「エンゼルスは1カ月以上、大谷がリアル二刀流で出場した試合ときだけしか勝てていない。これこそ(MVPに値する)価値ではないのか?」と主張。同氏が指摘する様に、大谷は低迷するチーム内で孤軍奮闘しながらリーグ上位の成績も残している。大谷を推すメディアは、これを理由に挙げているところがほとんどだ。しかし、「もし二刀流がMVP選考で優位になるなら、そうでない選手(特に打者)は不利ではないか」と、『ピンストライプ・アレー』のようなメディアは危惧している。

 とはいえ、ジャッジは決して不利な状況にいない。実際、『ピンストライプ・アレー』ほど強烈ではないが、ジャッジを推す声は他にもある。例えば、MLB公式メディア『MLB.com』は13日に掲載した、記者やコラムニストによるMVP争いをテーマにした討論会では、「ヤンキースという競争力のあるチームで活躍している」や、「ロジャー・マリス(ヤンキース)のア・リーグ年間最多本塁打記録(1961年)を超える可能性がある」など理由を挙げ、参加した4人全員が「ジャッジがMVPだ」と言っている。さらに、全国紙『USAトゥデー』のボブ・ナイチンゲール記者は14日、「ア・リーグMVPにふさわしいのはジャッジだ」とSNSで主張している。

 また、8月19日付の米オッズサイト『ベガス・インサイダー』によるMVP予想オッズでは、大谷が「+550」(約6.5倍)であるのに対し、ジャッジは「-700」(約1.14倍)でトップ。他のオッズサイトもほぼ同じ倍率。このように、現地では「ジャッジが優勢」という見方が多い。

 ただし、今後、大谷への評価が逆転する可能性はある。というのも、この議論が巻き起こったのも、このところの大谷が絶好調で、ジャッジやヤンキースが失速気味だからである。にわかに面白くなってきたMVP争いは、これからどんな展開を迎えるのか。各選手たちの今後の活躍に注目だ。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)