長期契約を結んだものの、わずか1年の在籍でチームを去ったレイエスは、のちに「(トレードされたことは)ショックだった」と振り返っている。ローリア氏はレイエスに対して「絶対に君をトレードしない」と度々語っていたようで、トレードの数日前にも「(マーリンズの本拠地がある)マイアミに家を買うように勧めてきたんだ」と話している。

 マーリンズのファンもローリア氏が心を入れ替えてチーム強化に本腰になったと思っていただけに、いきなりのファイヤーセールに激怒。

 マーリンズの地元紙マイアミ・ヘラルドが当時400人のファンを対象にしたアンケートによると、87%がファイヤーセール対し裏切られたと憤慨しており、83%がローリア氏に否定的な意見を持っていた。「彼はマイアミと野球からお金を吸い取るヒルだ」、「お金のことしか考えていないし、彼のためにお金を一銭も使いたくない」と痛烈に批判する声が相次いだ。2012年にオープンした新球場建設には地元民からの多額の税金が投入されていたこともあり、「球場の建設費を金利付きで全て払い戻すべき」という意見もあった。

 そして、ファンから嫌われまくったローリア氏は2017年にマーリンズを手放することを決意する。

 買収時は1億5850万ドル(約212億円)だったチームの価値は、税金を投入して建設された新球場などによって価値を上げ、売却時には12億ドル(1605億円)にまで上昇。ローリア氏はファンの指摘通り、最後の最後まで球団に関わることで金儲けに成功している。

 しかし、チームはワールドシリーズを制覇した2003年以降はファイヤーセールなど長期的なチーム強化プランの欠如によって低迷していたが、2020年には17年ぶりにポストシーズンに進出。新たなオーナーグループの下で新たなフェイズに入っている。