2012年にオープンしたマーリンズの本拠地球場(ロイター/アフロ)
2012年にオープンしたマーリンズの本拠地球場(ロイター/アフロ)

 今年はエンゼルスの大谷翔平に移籍の可能性があったことで、日本でもメジャーリーグのトレード期限前の動きが大きな話題となった。

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 結果的に大谷は残留となったが、現在メジャー最高のプレイヤーの一人と評される23歳のホアン・ソト(ナショナルズ→パドレス)が移籍。日本であれば、早くから頭角を現したスーパースターが放出されるということはまず考えられないが、メジャーでは条件次第で誰しもがトレードの対象となることを物語っているだろう。今回のソトのトレードを見て、日本と大きく異なる移籍に対する考え方に驚いた野球ファンも多いのではないか。

 だが過去には、今年とは比べものにならない大規模なトレードを一定期間に連発するという事例もある。代表的なものが、マーリンズが幾度となく行ってきた“ファイヤーセール”と呼ばれるものだ。

 マーリンズが最初にファイヤーセールを敢行したのが、1997年に球団創設5年目にしてワールドシリーズ制覇を果たした直後。世界一になった喜びもつかの間、その年のオフに野手ではレギュラーだったジェフ・コーナイン一塁手、モイゼス・アルー、デボン・ホワイト両外野手、投手ではエース級のケビン・ブラウン、アル・ライター、クローザーのロブ・ネンと主力6人をトレードで放出したのだ。

 さらに、翌シーズン途中にはドジャースとのトレードでチャールズ・ジョンソン捕手、ボビー・ボニーヤ三塁手、ゲイリー・シェフィールド外野手ら5選手を放出。見返りとしてマイク・ピアザ捕手、トッド・ジール三塁手という実績十分な選手を獲得したものの、ピアザは約1週間後に、ジールも約2カ月半後に手放しており、実質的なチーム補強ではないと言えるだろう。

 結局、1997年の世界一からたった1年で当時のメンバーで野手のレギュラークラスだった6人、投手では先発ローテーションの2人とクローザーがチームから去ることとなった。コストカットという大義名分があったとはいえ、1年でこれほどまでチームが変わってしまうというのはメジャーですら稀だ。

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