写真はイメージ(GettyImages)
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 約5.5組に1組が不妊治療の検査や治療を受けたことがある時代であるにもかかわらず、不妊は未だ当事者が「身近な人にこそ話しづらい」と悩むテーマだ。こうした当事者のさまざまな“孤独”を掘り下げながら、不妊治療の今を探る短期集中連載「不妊治療の孤独」。第1回前編では、妊活したいけれども「性交ができない」と悩む37歳女性の実例を紹介したが、後編では、年々増加傾向にある “セックスレス妊活”について。

前編も読む→【「妊活したいけど1回も性交していない……」結婚6年目夫婦の他人に言えない深い悩み】

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 今、性交を試みても「できない」という夫婦が少なくないという。“セックスレス”が聞かれるようになって久しい今、“セックスレス妊活”という言葉も聞かれるようになった。

 一般的な不妊症の定義は「妊娠を希望し、避妊せずに性交しているのに一年以上妊娠しない状態」だが、性交できない人の不妊外来受診が珍しくない現在。ここで言う「性交できない」は、いわゆるセックスレスではなく、「性交したくても何らかの理由でできない」状態を指す。

 夫婦のどちらか、あるいはどちらもが性交の経験がなく、対処法が分からずに深刻に悩んでいるケースもあれば、「友人みたいな関係で性交する気分にならないけれど、子どもが欲しい」という声も珍しくない。

「“妊娠を希望しているが、性交ができない”という悩みを抱えて訪れる方が多い」

 とは、元日本性科学会理事長で、性機能障害に悩むカップルが数多く訪れる性外来で、30年にわたってカウンセリングを行っている婦人科の大川玲子医師。こうしたカップルは増加傾向にあるものの、相談できる場所が少ないのが深刻な課題だという。

「できれば“子どもを自然に授かりたい”という思いで、性交ができるようになりたいという方が多いものの、セックスに関するカウンセリングを行なっている病院はかなり数が絞られます。晩婚化が進む中、妊娠を望むなら、性交の段階であまり時間をかけていられないという判断から、いきなり不妊治療を選ばれる方も少なくない」(大川医師)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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