昨年オフに日本ハムから事実上の自由契約となった楽天の西川遥輝
昨年オフに日本ハムから事実上の自由契約となった楽天の西川遥輝

 BIGG BOSSこと新庄剛志新監督を迎えたものの、前半戦を5位から9.5ゲーム差の最下位で終えた日本ハム。オーダーをガラポンで決めるなど突拍子もないやり方に対して批判の声も少なくないが、野手を中心に若手の台頭が見られることは事実である。

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 そして、その流れを作っているのが主力選手の早い見切りではないだろうか。昨年はシーズン途中で主砲の中田翔が暴力事件をきっかけに巨人に移籍し、さらにオフには秋吉亮、西川遥輝、大田泰示の3人をノンテンダーという名目で自由契約にしたことは記憶に新しいが、それ以前にもFAなどで他球団に移籍した選手は非常に多い。

 では日本ハムが選手を見切るタイミングは適切だったのだろうか。過去10年にFAなどで国内の他球団へ移籍した主力選手の翌年の成績をまとめてみたところ以下のような数字となった(昨年オフに退団した選手は前半戦終了時点)。

鶴岡慎也(2013年オフFA)
98試合 35安打0本塁打25打点0盗塁 打率.216

大引啓次(2014年オフFA)
96試合 70安打5本塁打41打点6盗塁 打率.225

小谷野栄一(2014年オフFA)
56試合 54安打4本塁打22打点0盗塁 打率.295

陽岱鋼(2016年オフFA)
87試合 87安打9本塁打33打点4盗塁 打率.264

増井浩俊(2017年オフFA)
63試合 2勝5敗35セーブ9ホールド 防御率2.49

大野奨太(2017年オフFA)
63試合 27安打2本塁打10打点0盗塁 打率.197

中田翔(2021年シーズン途中無償トレード)
34試合14安打3本塁打7打点0盗塁 打率.154

秋吉亮(2021年オフノンテンダー)
一軍出場なし(日本海オセアンリーグの福井ネクサスエレファンツでプレー、今月ソフトバンクに入団)

西川遥輝(2021年オフノンテンダー)
75試合 60安打6本塁打29打点17盗塁 打率.220

大田泰示(20201年オフノンテンダー)
33試合 25安打5本塁打13打点0盗塁 打率.281

 こうして見てみると移籍先で主力として十分な活躍を見せたケースは少ないのが非常によく分かる。最も活躍したのは増井だ。移籍1年目にキャリア2位となる35セーブをマーク。防御率も前年の2.39と同水準をキープしている。しかし翌年以降は成績が大きく低下。4年契約ということを考えると、獲得したオリックスも大成功とは言いづらいだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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“見切り上手”も若手が育たない誤算