東京都で新型コロナウイルスの感染者が3万人を超えたニュースを表示する大型ビジョン=2022年7月21日
東京都で新型コロナウイルスの感染者が3万人を超えたニュースを表示する大型ビジョン=2022年7月21日

 新型コロナウイルスの新規感染者数が連日、過去最多を更新し、22日には全国で19万人を上回った。医療体制がひっ迫し、各地で自治体独自の医療警戒レベルが引き上げられるなか、政府は第7波による行動制限について「今の段階では必要ない」という姿勢だ。人の移動が増える夏休み。本当に行動制限なしで大丈夫なのか。また、ワクチン4回目接種の対象を全員に広げる必要はあるのか。感染症の専門家で長崎大学大学院の森内浩幸教授(小児科学)に聞いた。

【写真】森内浩幸教授

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――新型コロナウイルスの1日あたりの新規感染者数が東京都で3万5千人に迫り、全国では日々過去最多を更新している。この状況をどう見ているか。

まず大事なのは感染者数よりも死亡者数や重症者数。それが今のところあまり増えていない。最近の「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」のデータを見ても、60歳未満で特に基礎疾患もなければ、オミクロン株の重症化率や死亡率はほとんどインフルエンザと変わりがないということが示されている。つまりハイリスクの人を守ることができれば、新規感染者数が著しく増えたとしても騒ぐ必要はない。 

――重症化リスクの高い人を守る方法は。

4回目のワクチン接種をきちんと行うことだ。現在のワクチンは、感染予防効果はあまり高くないが、イスラエルのデータを見る限り、3回接種と比べて高齢者のコロナ関連死を4分の1に抑えることができるといわれている。入院者が少なくなれば、医療体制を維持するという面でも意味がある。

しかし4回目接種は今年5月からスタートしていたにもかかわらず、60歳以上の接種率が35.5%という悲惨な数字で、非常に危惧すべき状態といえる。若い人を中心にした現在の感染がこのまま高齢者に広がっていけば、重症化する人、命に関わる人が増えてくるだろう。

今年の初めごろの第6波でも、日本では3回目の接種が全然進んでいなかったために多くの死者が出てしまった。原因は、行政の都合で「接種間隔を5カ月空ける」という医学的には根拠のないことを言って、先延ばしにしたからだ。しかも当初は8カ月、6カ月と徐々に短くしていった。これは明らかに失政。また同じことが繰り返されようとしている。

私に言わせれば、若い人の3回目接種よりも、ハイリスクの人に4回目接種を進めるほうが圧倒的に重要だ。

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「現時点で行動制限はいらない」その条件は?