「衣服内は相当な高温になる。また汗の蒸発熱(気化熱)によって体温は下げられるが、それができなくなる。定期的に衣服内の高温度を循環させ、汗を蒸発させないと危険でもある。失われた水分、電解質(塩分)の補給は言うまでもない。中途半端な取り組み方では危ない部分もあるが、選手個々の意識が徹底されているのでしょう」(在京球団コンディショニング担当者)

「約3時間程度の試合では炎天下の中に選手がいるのは守備中、もしくは攻撃中の打者と走者時だけ。それ以外の試合時間の約半分はベンチで休養を取れる。そういった時間が綿密に考慮されており、練習中は個々でコンディショニング調整を行う意識の高さも感じた。練習中から1試合を通じてのペース配分まで考えているのだろう」(九州から訪れた高校野球部監督)

 グラウンドコートを着込んでの練習は炎天下対策が大きいが、それ以外にも理由がある。ハイテク機器を使用しての情報戦が進む高校球界において、体型の変化を含めた選手の個人情報が漏洩することへの対応もできる。そして「あれだけやったから」という精神面への影響もあるという。

「ウエイトトレーニング、食事、サプリメント摂取も徹底的に行われる。成長期の選手たちは1日単位で体型にも変化が現れる。公式戦に向けて多くの高校が偵察に訪れるため、余分な情報を相手に与えない方が良い。グラウンドコートを着ることで上半身は隠すこともできる。故障選手がテーピングなどを施している場合も同様です」(スポーツ新聞 野球担当記者)

「精神論には問題も多い。しかし一発勝負のトーナメントでは気持ち次第で勝敗が左右されることも多い。プロ注目選手といえども高校生であり精神的な波もある。やるだけやった、という充実感や安心感を得られるなら(暑さ対策も)効果的かもしれない。しかし何度も言いますが危険な部分もあります」(在京球団コンディショニング担当者)

 科学的な視点から考えれば前時代的に見えるかもしれない。しかし、やり方次第では効果的なものでチーム強化にも繋がる。多くの経験を重ね、数々の結果を残してきた西谷監督が取り入れた練習方法だからこそ説得力もある。選手自身も状況に応じた「正しい」取り組み方をしているから、事故や問題も発生しないのだろう。

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グラウンドコートには他の“効果”も?