平成の終わりから令和に入ると、左翼ゲリラによる事件も影をひそめた。しかし、反天皇思想による過激な事件はいまだに起きている。

 令和元年となる直前の2019年4月には、秋篠宮家の長男で皇位継承順位第2位となる悠仁さまが標的にされる事件が起きた。

 悠仁さまが通っていたお茶の水女子大学付属中学(東京都文京区)に男が忍び込み、悠仁さまの机に刃物2本を置いたのだ。逮捕された男は、「刺すつもりだった」と供述している。

 先月25日にも、包丁とともに皇族を批判する内容が書かれた手紙が宮内庁に送りつけられた。その手紙には、複数の皇族の名前とともに皇族への批判が書かれていた。宮内庁の事情に詳しい人物によれば、

「その中には、秋篠宮家の皇族方の名前があったそうです」

 悠仁さまが現在通う、筑波大学付属高校(東京都文京区)にも入学に合わせて学校の敷地を囲むように有刺鉄線や不審者の侵入を防ぐための「忍び返し」が新たに設置された。また、正門には24時間体制で民間の警備員を常駐させるなど警備体制は強化された。

「日本の警備は過剰」の真意

 一方で、宮内庁サイドとすれば歯がゆい思いもある。

「日本の皇室は、国民との触れ合いで信頼関係を築いてきた。令和に入っても皇室を標的にした事件が起きていますが、それでも移動の際に車の窓を開けるのは、国民への信頼の表れでもあります」

 そう話すのは、元駐ラトビア大使で宮内庁では侍従として平成の両陛下に仕えた多賀敏行・中京大学客員教授だ。 

 多賀さんが侍従として仕えたのは、1993(平成5)~96年。国内ではまだ反皇室闘争の影がチラつき、海外では反日感情が渦巻いていた時期だった。

 一方で、皇室側は、ソフトな警備を望んでいた部分もある。

「国民と触れ合いと交流を続けたいという天皇や皇族方のお気持ちを誰よりも理解しているだけに、警備当局としても悩ましい問題であったと思います」(多賀さん)

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