安倍晋三元首相と昭恵夫人
安倍晋三元首相と昭恵夫人

 そうしたら、「竹山さん、どうもどうも、安倍です」と話しかけてくれて、「すみません、お時間を取っていただいて」と言うと「いえいえ、いいんですよ」という感じで、威圧的ではなく、しゃべりやすい方だなと思った。首相経験者で豪腕というか仕事ができる方だから、僕のように誤解した印象を持っていることもあるんだなと思いました。

 改憲について質問したときに、私が指摘したことに対しても「竹山さん、それはちょっと違って、これはね……」という口調で一から教えてくれる感じでした。それが非常に分かりやすかった。安倍元首相が好印象だったと言う話を亡くなってからすると、いまさら何を言っているんだとか言われるかもしれませんが、でも実際はそうだったんですよ。

 甘いものがお好きだと言うので手土産を持って行き、安倍元首相に渡すと「結構、重いね」と。「安倍さん、大丈夫です。お菓子以外ヘンなものは入れていないです」って返して、ゲラゲラふたりで笑い合ったり、意外とユーモアもある方でした。

 昭恵夫人とご夫婦の話しをしたのをいま思い出すと切ないと言うか、なんて言ったらいいのか……。「うちも子どもがいない夫婦なんですが」という切り出し方で、安倍元首相と昭恵夫人のプライベートな部分を引き出したんですけど、その話も面白かった。銃撃事件後、昭恵夫人について話したことを思い出してしまい本当に切ない。プライベートなことまで話したロングインタビューは、今回の僕の対談が最後だったそうです。それを知って、また切なくなってしまいました。

 ある政治記者が教えてくれたんですが、安倍元首相は僕のことを気に入ってくれたらしく、「今度、飯でも誘おうか」となっていたらしいです。そのことを数日前に聞いたから、なんとも言えないショックですよね。いまもなんとなくモヤモヤとしているというか、「あんないい人、本当に亡くなってしまったの?」って思っていて、知り合ったばかりの方が亡くなるのも切ないものですね。

 言い表せない切ない気持ちが事件後からずっと続いていますが、そこから考えたことがあります。安倍元首相の銃撃事件が参院選の選挙期間中だったこともあり、「民主主義への冒とくだ」と多くの方が言っていた。たしかに、暴力で言論を封じ込めるのは民主主義への冒とくとは思います。冒とくだと憤るだけでなく、なぜこういう事件が起きたのか社会背景を考えるべきでは?

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その先にあることを考えてほしい