憲法改正を訴えてきた日本維新の会の松井一郎代表
憲法改正を訴えてきた日本維新の会の松井一郎代表

「安倍さんが首相のとき、憲法改正というと、イメージ的にも強引で、憲法9条ありきと見られ、反発もあって進展しなかった。安倍さんが不幸にしてお亡くなりになり、その悲願、憲法改正を成就させようと、岸田首相もやりやすくなったのではないか」

 こう話すのは、自民党で政務調査会の調査役を長く務め、憲法関連の著作も多数ある政治評論家の田村重信さん。

 野党第1党が維新となれば、

「岸田首相はそれを利用して、維新を使って憲法改正の機運を高めようとするのではないか」

 との見方を示す。

 立憲の幹部も、

「安倍さんがあのような形でお亡くなりになったことは悲しいばかりだ。だが、それと憲法改正とは別。安倍さんの悲願だったから改正というのはおかしい。声が大きく勢いがいい維新に憲法改正の論議をリードさせ、世論の流れを作り、『背中を押されたので、やりましょうか』と岸田首相に演出をされることを警戒しなければならない」

 と話す。

 そうした見方について、自民のある幹部はこう分析する。

「維新や国民を使って発議となり、国民投票で過半数がとれなければ、岸田首相は退陣を余儀なくされます。安倍さんという一番の重鎮がいなくなり、最大派閥の安倍派が一致結束となるかは不透明です。それならば、衆院解散を打ってさらに政権を盤石にして、憲法改正という驚くような手もあります。党内では維新に乗って突き進むのはいいが、こけてしまったら失うものが大きいので慎重論もかなりある」

 仮に憲法改正となれば、最大の焦点は9条だ。

「これまで憲法改正は、まず9条に自衛隊を明記するかどうかでした。しかし、ロシアのウクライナ侵攻を見ても、それだけはではすまない。つまり外国の軍隊と日本の自衛隊とが一緒に行動できないとだめだという世界情勢です。自民は緊急事態条項も憲法改正に組み込むべきと公約に入れている。岸田首相は、聞く力を押し出し、ムード作りが上手だ。気が付けば世論が傾いていくのではないのか」(田村氏)

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憲法改正の必要はなく、現行のままでも対応できる