「黄金の3年間」を手に入れた岸田首相
「黄金の3年間」を手に入れた岸田首相

 参院選は7月10日、全国で投票が行われ、即日開票の結果、自民党と公明党の連立与党が圧勝する見通しだ。野党では日本維新の会が躍進し、野党第1党をめぐる立憲民主党との議席獲得に注目が集まる。衆院の任期満了や次の参院選は2025年。岸田文雄首相は「黄金の3年」を手にした。とりかかるのは憲法改正か。

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 投開票日前日の9日は、安倍元首相が銃撃された事件のショックが冷めやらぬ状況で、候補者の多くが安倍元首相への追悼を述べるとともに、暴力に屈しないとの意思を示していた。

 10日は午後8時の投票締め切りと同時に、自民の優勢を各報道機関が速報したが、ある自民幹部は「安倍元首相のことが頭から離れない。万歳をする気にはなりません」と語った。

 とはいえ、自民にとっては、安倍元首相をはじめ歴代首相らが何度も進めようとして実現しなかった憲法改正の発議の条件である、衆参両院で改憲勢力が全議員の3分の2以上、をクリアする流れができつつある。ある自民党幹部はこう話す。

「維新が勢力を伸ばせば3分の2をクリアできる。かつてなかったほど、憲法改正の条件が整いつつある。岸田首相も動くのではないか」

 維新は、今回の参院選のマニフェストで憲法改正を掲げており、

「自衛のための実力組織として自衛隊を憲法に位置づける『憲法9条』の改正、他国による武力攻撃や大災害、テロ・内乱、感染症蔓延(まんえん)などの緊急事態に対応するための『緊急事態条項』の制定に取り組みます」

 と打ち出した。

 維新の代表で、大阪市長の松井一郎氏は街頭演説で、

「基本的に日本は、自分の国は自分で守るというスタンスが必要だ。我々の子どもや孫が、安心して安全で暮らせる日本。本気で憲法改正の議論を国会でやりたい。他国の侵略はしないとの条文は残して、日本を守るために手段を尽くすべきだ」

 と訴えていた。ロシアのウクライナ侵攻という国際情勢も追い風となった。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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岸田首相は維新を使って憲法改正の機運を高めるのでは