足立光氏(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
足立光氏(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 広告効果に関する曖昧な領域について、近年のネット上の広告も含めて適切なデータをもって非常に説得的に論じているという点では、前作同様、いやそれ以上にブランディングに関わるどなたにでも参考になる本と言えます。

■ブランド資産は「独自性」と「一貫性」

『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』は、ブランド資産を築くうえで最も重要なポイントが2つあると強調しています。それが「独自性」と「一貫性」です。
あくまでも大事なのは差別化ではなく、独自性なんですよね。「他と比べてうちの製品・サービスのほうが2割いい」というような差別化では、ブランド資産は築けません。独自の要素が必須です。

 たとえば、ファミリーマートのブランド資産(ブルーとグリーンの2色カラーや「あなたと、コンビに、」というタグラインなど)を見た人に、他のブランドやカテゴリーではなく、ファミリーマートなんだと、ぱぱっと思い出してもらえるように、独自のブランド資産を築いていく。そういうことがすごく重要です。

 一貫性には「面」と「時間」の両軸があって、もちろんどちらも大事です。「面」というのは、人々がブランド資産を見聞きするいろんなタッチポイント、そのすべてにブランドとして一貫性がなくてはいけません。私もファミリーマートのお客さまが目にするもの、パッケージやツイッター、ホームページなど、すべて目を通しています。まさに、お客様から見た一貫性を確保するためです。

「時間」の一貫性とは、ブランドができてからの時間が経過していく中で、変えないものは変えないという一貫性です。ありがちなのは社長や担当者が代わったときにブランド資産を変えてしまって、ブランド自体がダメになるというパターンです。新任の担当者は「自分がやった何かを残したい」と、パッケージの変更などをしがちです。

 パッケージの若干の変更などにはほとんど意味がないし、効果がないと『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』は、データを示しつつ明確に論じています。私の経験上でも、それはすごく正しいと思います。「ブランディングの敵は、新しいもの好き」といった戒めも書かれています。私が過去に在籍した会社で、当てはまる関係者の顔が次々と浮かんできて、思わず苦笑しました。

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消費者の記憶に訴えかける方法とは