ジェニー・ロマニウク著/前平謙二訳/加藤巧監訳『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』※Amazonで本の詳細を見る
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■消費者の記憶に訴えかける方法とは

 ブランド資産にはロゴやカラーなどいろいろな要素があります。その中でどれをお客さまの記憶に残していくのかを決めて広告を含むコミュニケーションを作っていかないといけません。その意味では、このブランド要素は100%のお客さまに認知してほしいポイントなんだということを、会社の意志として決めて、周知徹底し、それを使い続けることがとても大事だと思います。

 ファミリーマートは昨年の40周年を機に、担当者が代わってもブランド資産を継続的に築いて行けるように、ファミリーマートとして訴求していくこ5つの方向性、すなわち(1)もっと美味しく(2)たのしいおトク(3)「あなた」のうれしい(4)食の安全・安心、地球にもやさしい(5)わくわく働けるお店、を決めました。21年に全社的に合意し、22年も継続して訴求しています。

 コンビニとしてまったく基本的な内容ですが、(2)たのしいおトクは、他のコンビニでは打ち出していないユニークな項目だと思います。ファミリーマートはこの5つの方向性に沿ったいろんな施策を次々と打ち出し、一貫性をもってコミュニケーションしていくことで、お客様の心の中にファミリーマートのブランド資産を築いていきたいと考えています。

『ブランディングの科学 独自のブランド資産構築篇』では、人間の記憶のメカニズムをひきながら「リフレッシュメント」と言っています。ブランドを思い出してもらうコミュニケーションを何回も繰り返し行わなければ、人々は忘れていくんですね。

 記憶に訴えかける、つまり、ブランドを思い出してもらうためには一貫性が必須です。ただし、一貫性があるだけでは新しさがないから注目されないし、記憶に残すことができません。そうかと言って、新しいだけで一貫性がなければ、それまで築いたブランド資産と記憶として結びつかず、ブランド資産を築くことはできません。それを両立させていくのは難しいんですが、ブランド資産を築くには、その「一貫性と新しさのバランス」を追求するしかないわけです。

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ブランド構築には企業の独自性を追求する姿勢が必要