不動のレギュラーと言えるのはキャッチャーの木下だけ。ルーキーの鵜飼は健闘しているが、それ以外は総崩れと言えるのが実情だ。過去数年を振り返れば高橋と京田がレギュラークラスとなったが、高橋は高校ナンバーワン野手として3球団競合指名を受けていたことを考えると、思い描いたような成長曲線を描いたとはとても言えない。同じく競合で抽選を引き当てた根尾も徐々に戦力にはなってきているものの、現在話題となるのは投手起用ばかりというのは寂しい限りである。下位指名の中からレギュラーになったのも大島洋平(2009年5位)と阿部寿樹(2015年5位)くらいでともにベテランとなっており、若手では岡林勇希(2019年5位)が目立つくらいである。これだけ指名した野手が低迷していては、貧打に悩むのも不思議はないだろう。

 スカウティングと育成に何かしらの問題があるのは間違いないが、入団前の選手の評判を考えるとそこまで偏った指名をしているようには感じられない。前述した高橋、根尾、石川はその年の高校生でも最も高く評価されていた野手であり、既に引退、退団した選手たちも順位が高すぎるという印象はなかった。強いて言えば昨年のブライトはリスクの高い指名だったように感じるが、決して中日だけが高く評価していた選手たちではないことは確かだろう。

 気になるのはプロ入り後に揃って打撃が小さくなっている点だ。高橋以前に入団した堂上直倫(2006年高校生ドラフト1巡目)も高校時代はスラッガーだったが、プロでは完全に守備要員となっている。広い本拠地のバンテリンドーム ナゴヤでホームランを打つのは難しいので、とりあえずはミート中心のバッティングで勝負した方が良いと考えるのも理解できなくはないが、常に優勝争いをしていた時のチームには和田一浩、森野将彦といった長打が打てる日本人選手が果たしてきた役割は大きかったはずだ。本来持っていた長所の部分を削り、小さくまとめてしまっていることは確かだろう。

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低迷脱出に“大砲”は欠かせない?