作家の林真理子さん
作家の林真理子さん

 母校を何とかしたい気持ちはずっとあった――。日本大学の次期理事長に内定した作家の林真理子さん(68)。日大では、2018年の危険タックル問題への対応で大学に批判が殺到、21年には田中英寿理事長(当時)が所得税法違反の疑いで逮捕されるなど不祥事が相次いだ。体制の刷新に向け、教育関係者からは期待する声が上がっている。

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「『理事に』という話は聞いていたが、理事長候補としては聞いていなかったので意外だった」

 こう話すのは日大文理学部の初見基教授(64)だ。

 林さんは日大芸術学部のOGだ。18年に不祥事が起きた際にも強い関心を寄せていた。

<調べてみたら、理事や評議員にのべ164人中女性が4人しかいない。こうなったら私が立候補します。なんのコネもツテもないけれど、私をぜひ。もちろん無給でやります>

<イメージがとことん落ちた母校のために、ひと肌もふた肌も脱ごうではないか。あのガバナンス全くなしオヤジばかりのオレ様主義の学校を、オバさんの力で何とか変えてみたい>(『マリコを止めるな!』(文藝春秋))

 などと大学を改革する思いをつづっていた。

 そのため学内では、林さんが理事になるのでは、といった話は出ていたようだが、次期理事長候補には日大OBの政治家や元官僚などの名前が取りざたされていた。

 理事長に内定したことについてどう見ているのか。初見教授はこう語る。

「大学の運営手腕は分からないが、一部では『担ぐ神輿(みこし)は軽い方がいい』という話も聞く。ぜひそれを裏切っていただきたいですね。大学のこれまでの経緯を知らないがゆえにできることもある。日大の常識は世間の非常識だと思いますので。ただ、やはり大学の中枢は守旧派が占めている。これに取り込まれないように気を付けてほしい」

 大学内では、作家として活躍してきた林さんに大学の経営ができるのか、と不安の声も上がる。

 そうした指摘について、法政大学前総長の田中優子名誉教授は「重要なのは本人の覚悟と姿勢だ」とした上で、こう語る。

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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