くりぃむしちゅー有田哲平
くりぃむしちゅー有田哲平

 5月9日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ)で、出川哲朗がくりぃむしちゅーの有田哲平を「第二の松本人志」と呼んで称賛した。演者としての能力があるだけでなく、企画力にも優れているからだという。現在の有田は「第二の○○」と呼ぶには地位が高すぎる気もするが、出川の言いたいことはわからないでもない。

【写真】くりぃむ上田に「天才」と言われながら25年間パッとしなかったのはこの人!

 世間では、テレビに出ている芸人を評価する際に、レギュラー番組の本数や視聴率などの数字に換算できる部分ばかりに目が行きがちだが、本当に重要なのは芸人として「本質的な仕事」をどれだけやっているか、というところにある。

 ほかの芸人でも務まるような「置き換え可能の仕事」ではなく、その芸人でないとできない仕事がどれだけあるか。そういう基準で見た場合、現在の有田は唯一無二の地位を確立した芸人であると言える。

 そんな有田の代表作とも言えるテレビ番組が、2015年4月に始まった『全力!脱力タイムズ』である。報道番組のようなセットで、有田哲平演じる「アリタ哲平」がキャスターとして進行役を務めている。

 向かって右手には元経済産業省官僚の岸博幸、犯罪心理学者の出口保行、侵入生物専門家の五箇公一など、報道番組でも解説役を務めるような各分野の専門家が「全力解説員」として並んでいる。向かって左手にはゲストの俳優と芸人がいる。スタジオの雰囲気だけはお硬い報道番組そのものだ。

 世界や日本のさまざまな社会問題を取り上げて論じる、というのがこの番組の表向きのテーマだ。しかし、それが真正面から論じられることはまずない。全力解説員はテーマとは関係ない専門分野の話を始めたり、ツッコミどころの多いふざけたVTRが流されたりする。最近では悪ふざけのバリエーションもどんどん広がっている。

 ゲストの芸人はこのような展開に戸惑い、あきれながら、ツッコミをいれていく。普段バラエティ番組に出ていないようなゲストの俳優も、突然ふざけた言動をしたりする。それが芸人をさらに困惑させる。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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