「自分の専門分野で深い話ができる英語力が目標でした」と話す坂東眞理子さん(撮影/加藤夏子=写真映像部)
「自分の専門分野で深い話ができる英語力が目標でした」と話す坂東眞理子さん(撮影/加藤夏子=写真映像部)

 昭和女子大学の理事長・総長であり、ベストセラー『女性の品格』の著者でもある坂東眞理子さん。男女共同参画社会の推進に取り組み、国際的に活躍してきた坂東さんは、これまでどのように英語を学んできたのでしょうか? 『AERA English2022』(朝日新聞出版)では、東大の学生だった頃から現在までの英語との付き合い方を聞きました。

【写真】坂東さんが聞いていた、NHKラジオ英語講座の元カリスマ講師はこちら。

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 米ボストンにある昭和女子大学の姉妹校と連絡を重ねたり、アイルランド国立大学の学生に向けて「日本社会と女性」をテーマに特別講義をしたりと、日常的に英語を使う機会があり、英語力を維持するモチベーションにもなっています。

 今はコロナ禍でお休みしていますが、英語のブラッシュアップのために週に1回、オーストラリア出身の大学講師とディスカッションをしていました。日本のジェンダーの問題、教育問題に関する新聞や雑誌の記事を読み、それについて話し合うのです。自分の専門分野なのでテーマが拡散することなく話が深まりますし、ネイティブスピーカーが使っている生きた表現を覚えることもできます。

 最初に仕事で英語が必要になったのは、総理府に在籍していた26歳のときでした。東南アジアと日本の若者が一緒に東南アジアを巡る「青年の船」に乗船したのです。英語が母語ではない人ばかりですから、公用語はお国なまりの英語でした。

 30代になると女性問題を担当するカナダ政府のオタワのオフィスで半年間研修し、ハーバード大学の客員研究員としてアメリカに1年間、滞在しました。痛感したのは街での日常会話の難しさです。

 カナダ政府のオフィスや大学の研究所の人たちは実にクリアでわかりやすい英語を話してくれます。共通の関心があり、専門用語を知っているから、女性政策や経済政策についてならプレゼンテーションもディスカッションもできます。

 しかし、たとえば街のレストランで働く人の英語は聞き取りにくく、こちらの注文が通らないこともありました。すべての分野をすべての人と話せるようになるのは難しいので、まずは自分の専門分野で深い話ができる英語力をつけることを目標にしました。

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