※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
この記事の写真をすべて見る

「緩和ケア」というと死が差し迫った人が受けるもの、と思う人も多い。だが、緩和ケアは「がんと診断されたときから受けるもの」だ。とりわけ、がんが再発・転移してからは、存在感を増す緩和ケア。好評発売中の週刊朝日ムック『いい病院2022』(朝日新聞出版)では、近年、大きく形を変える「緩和ケア」に迫った。『「緩和ケア=がん治療の終わり」ではないと現場医師たちが語る理由』に続いて、お届けする。

【病気によって違う、死に至るまで】

*  *  *

 再発・転移がんと診断されると、ほとんどの場合「がんの治癒」は困難となる。ただ、がん治療の進歩で、がん種にもよるが再発・転移がんでも生命予後は延びており、人によっては5年、10年と生きることもめずらしくない。

 再発・転移後の治療は、がんによる症状を和らげるか、進行を抑えることが目的となる。根治が望めないため、「がんとの共存」を前提とした考え方に変わるといえる。

 体調がいいときには新しい治療法を試してみる、治療による副作用が少ない方法を選ぶ、体調が悪化したら症状をできるだけ和らげる対処をとるなど、がんの状態や体調に応じて治療法を選んでいく。

 ここで大きな助けになるのが緩和ケアの存在だ。

■大きく変化した痛みのコントロール法

 緩和ケアとは具体的にどんなことをするのか。

 日本緩和医療学会理事長で神戸大学病院緩和支持治療科特命教授の木澤義之医師は次のように説明する。

「再発・転移がんが進行すると、痛み、倦怠感、呼吸困難、せん妄などの症状が出てくることがあります。症状の出方や強さも人それぞれです。治療が必要な不安や抑うつ状態になる人もめずらしくありません。こうした“日常生活を送るうえで不都合な症状”を少しでも抑えていくことは、緩和ケアの重要な仕事です」

 緩和ケアの柱の一つが「痛みのコントロール」。骨転移によって起きる痛みには放射線治療が効果を発揮することがあるが、多くの場合は医療用麻薬を使った治療が一般的だ。

 この治療法が確立される十数年前までは、痛みで苦悶する患者も少なくなかった。

次のページ
痛みに苦しむことが減ってきた