3月6日、ロンドンで行われた抗議デモ(gettyimages)
3月6日、ロンドンで行われた抗議デモ(gettyimages)

 欧州連合(EU)は、ワグネルがウクライナ東部に戦闘員を送り込んで破壊活動や拷問など行っていると指摘し、制裁措置を課してきた。

 そんなワグネルのオーナーとされるのがプーチン大統領の側近、実業家のエフゲニー・プリゴジン氏で、「プーチン氏の料理人」の異名を持つ。

 中村教授によると、ワグネルは14年以降、ウクライナ国内に潜り込み、今回の侵攻の下準備を着々と進めてきた。

「ワグネルの戦闘員は『自分はウクライナ人』と称して、ウクライナ兵のなかに紛れ込み、ロシア軍の侵攻が始まれば、内側からウクライナ軍を切り崩す。そんな役割を担ってきた」

■ロシア軍が侵攻を開始した2つの要因

 ロシアは昨年秋からウクライナ国境に近いベラルーシに兵力を集結。大規模な軍事演習を行い、ウクライナに圧力をかけてきた。このタイミングには2つの要因があると、中村教授は説明する。

 1つ目は、昨年9月にドイツで16年間首相を務めてきた旧東ドイツ出身のメルケル氏が退任したこと。

「これまでエネルギー資源の多くをロシアに頼るメルケル首相はプーチン大統領に気をつかい、さらに、アメリカなど西側同盟国との間を取り持つ調整役となってきた。そんなメルケル首相が退任したことで、『重しが取れ』、ロシアはウクライナに対する攻勢を一気に強めた」

 2つ目は、ゼレンスキー大統領の支持率低迷だ。

「ゼレンスキー氏は19年にウクライナ大統領に就任しましたが、彼は元コメディアンで、政治手腕がなかった。それで、支持率がどんどん低下してしまった。」

 一時は約70%もあった支持率は、昨年後半には30%台と低迷。さらに成果を出せない政権と財界の関係も悪化した。

「口うるさい財閥を疎ましく感じていたゼレンスキー大統領は昨年11月に『財閥解体法』を制定したんです。それで財閥との対立が決定的となり、人気もさらに下がった。そんなタイミングを狙ってプーチン大統領はウクライナへの攻撃準備を本格化した」

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侵攻はたった「2人」で決めたのか?