「上弦の陸」の鬼・妓夫太郎(画像は新宿駅地下・メトロプロムナードの大型広告より)
「上弦の陸」の鬼・妓夫太郎(画像は新宿駅地下・メトロプロムナードの大型広告より)
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【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

鬼滅の刃遊郭編の鬼・妓夫太郎は圧倒的な強さで鬼殺隊を苦しめた。長髪のやせこけた風貌や血まみれの鎌を操る姿から“負のオーラ”がにじみ出る妓夫太郎だが、意外とも思える特質がある。それは「おしゃべり」なことだ。戦闘中も終始、宇髄天元や炭治郎に話しかけ、ときには褒めそやしたり、情をかけたりもする。人間社会を憎んでいるはずの妓夫太郎が、人間たちと“おしゃべり”を続けようとする真意は何か。彼のセリフからひもといてみる。

【写真】「上弦の鬼」のなかで最も悲しい過去を持つ鬼はこちら

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■猗窩座と妓夫太郎の共通点 

『鬼滅の刃』では、鬼が人間と会話する場面がよく描かれる。鬼は単なる「化け物」ではなく、元・人間という過去を持ち、強い鬼であればあるほど、知性も思考力も十分にある。この鬼の特性は『鬼滅の刃』の作品特徴のひとつであるといえよう。

 これまでに登場した鬼の中で、ひときわ人間との会話が多い鬼がいる。上弦の参・猗窩座(あかざ)と、上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)だ。

 猗窩座が初めて姿をあらわした時、彼は無言で炭治郎に襲いかかっているが、炎柱・煉獄杏寿郎から「なぜ手負いの者から狙うのか理解できない」と言われると、こんなふうに答えた。

<話の邪魔になるかと思った 俺とお前の>(猗窩座/8巻・第63話「猗窩座」)

 猗窩座は、その後の「最終決戦」においても、煉獄への態度と同じように、冨岡義勇に熱心に話しかけている。義勇に「俺は喋るのが嫌いだから話しかけるな」と言われても、意に介さなかった。

<俺は喋るのが好きだ 何度でも聞くぞ お前の名を!!>(猗窩座/17巻・第148話「ぶつかる」)

 猗窩座は「強い人間」を好み、弱者を嫌う。最初に無言で炭治郎を攻撃したのは、その時の炭治郎が弱かったからだ。そして、注目すべきは、猗窩座は上弦会議では極めて無口だという点だ。居並ぶ上弦の鬼たちの戦闘力は相当のものだ。それでも煉獄や義勇への態度とはまったく異なる。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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言葉は乱暴でも「おしゃべり」の内容はまとも