過信したスキーヤーらが遭難するケースが多発している。写真はイメージ(GettyImages)
過信したスキーヤーらが遭難するケースが多発している。写真はイメージ(GettyImages)
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 スキー場の管理区域内で滑走禁止エリアに侵入したり、管理区域外の「バックカントリー」に出て遭難する事例が相次いでいる。捜索にかかった費用の請求を定めた業界団体では、一人に対し約70万円を請求したケースもあるという。だが禁止区域に入る「ルール違反」や、能力を過信して不十分な装備でバックカントリーに向かってしまう「無謀なチャレンジ」を試みる者は減らず、スキー場では悩みの種になっている。

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 長野県の野沢温泉スキー場。1月30日の午後、スキー場の管理区域内の滑走禁止エリアに3人のスキーヤーが立ち入った。同スキー場は「コースから一歩外れると危ない場所が多い」(野沢温泉村の担当者)。3人のうち2人は危険を察知して引き返したが、59歳の男性スキーヤーは“果敢に”先へと進んだようだ。結果、雪庇(せっぴ)を踏んで6メートルほど下に滑落。深く落ち込んだ場所で登ることも下りることもできなくなり、仲間も助けに行けないため、携帯電話で110番し救助を要請した。

 県警や地元の遭難対策協議会のメンバーらが救助に向かい、午後4時前に救出。男性は転落した際に顔面をぶつけており当初は脳挫傷の疑いがあったが、その後、大きな問題はないことが確認されたという。

 ただ、無事でよかった、で話は終わらない。

 野沢温泉村では、2010年12月に施行された「野沢温泉村スキー場安全条例」で、コース外での遭難者は捜索にかかった費用を弁償すると定めた。

 警察など公的機関の捜索は無償だが、遭対協が動いた場合、捜索に関わった一人につき日当2万円に保険が一人1万5000円などと、項目が細分化されている。

「その他、テントの設営費、スキー場が用意している雪上車やスノーモービルの使用料、営業終了後にリフトを使用した場合は、その費用も請求します」(村の担当者)

 男性には、遭対協の費用だけで30万円近くを請求することが決定しており、さらにスキー場側が使った機材などの費用が上乗せされるという。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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