阪神の栄枝裕貴(左)とソフトバンクの谷川原健太(写真提供・阪神タイガース/福岡ソフトバンクホークス)
阪神の栄枝裕貴(左)とソフトバンクの谷川原健太(写真提供・阪神タイガース/福岡ソフトバンクホークス)

 野球の守備で盛り上がる場面と言えば華麗なダイビングキャッチもそうだが、見事なスローイングによる補殺も見逃せないプレーではないだろうか。2018年の日本シリーズでは甲斐拓也(ソフトバンク)がシリーズ新記録となる6連続盗塁阻止を記録し、打率1割台ながらもMVPに輝いている。

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 なかなか注目を浴びることのない野手のスローイングという部分だが、チームの勝敗を大きく左右することも少なくない。そこで今回はまだ一軍での実績は乏しいものの、今シーズンぜひ注目してもらいたい強肩が売りの若手選手をピックアップして紹介したいと思う。

 まず捕手の若手で注目してもらいたいのが今年2年目の栄枝裕貴(阪神)だ。立命館大では3年まで大本拓海(ヤマハ)の控えで、実績が乏しかったにもかかわらずその強肩が高く評価されて2019年秋のリーグ戦後に行われた大学日本代表候補にも選出されている。ルーキーイヤーの昨年は、キャンプ中に行われたDeNAとの練習試合でいきなり3度の盗塁阻止で前評判通りのプレーぶりを見せつけた。

 結局一軍での試合出場はなかったものの、二軍ではチームの捕手で二番目に多い47試合に出場。10月に行われたファーム日本選手権でもスタメンマスクを任され、チームの優勝に貢献している。素早く小さい動きで速いボールを投げられるのが大きな特長。チームは正捕手の梅野隆太郎が国内FA権を行使せずに残留し、昨年シーズン終盤に多くマスクをかぶった坂本誠志郎も控えているだけに出場機会は限られそうだが、今年は一軍でもその強肩ぶりをぜひ披露してもらいたい。

 捕手でもう1人楽しみなのがオリックスドラフト3位ルーキーである福永奨だ。横浜高校でも下級生の頃から正捕手として活躍していたディフェンス型のキャッチャーで、2.00秒を切れば強肩と言われるセカンド送球はタイムの出づらい実戦でも1.8秒台をマークする。特筆すべきはその安定した球筋で、一直線でセカンドに届くボールの勢いは圧巻だ。課題だった打撃も最終学年で大きく成長し、4年秋には東都一部でMVPも受賞。捕手が固定されていないチームだけに、1年目から一軍に抜擢される可能性も十分にあるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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