現役時代の掛布雅之氏
現役時代の掛布雅之氏

 寅年の2022年、阪神は05年以来の優勝を目指す。ここ数年、Aクラスを続けているが優勝からは遠ざかっている。その阪神の敗因を分析したのが、2021年12月に上梓された掛布雅之氏の著書『阪神・四番の条件 タイガースはなぜ優勝できないのか』(幻冬舎)だ。掛布氏が4代目ミスター・タイガースの目線で「V逸の悔しさ」と「阪神への愛情」を語っている。

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 掛布氏は「V逸の要因は、真の四番打者不在にある」と分析した。特に興味深いのは掛布氏の「四番打者の定義」だ。よく野球評論家は「3割40本100打点」と言うが、掛布氏さえ1度しか経験がない。現実的な数字として掛布氏は三つを挙げた。

【1】「打率・280、30本塁打、90打点」

【2】「安打数の2割以上が本塁打」

【3】「安打と四球を足して200」

 掛布氏自身、現役15年のうち、優勝した1985年を含む5度「四番の定義」をクリアした。掛布氏は2021年、ヤクルト村上宗隆、広島・鈴木誠也、巨人岡本和真を「四番打者として合格」と評価している。掛布氏の現役時代の130試合制に比べたら、143試合制の現在のほうがハードルは下がった。しかし、本塁打と打点の二冠王・岡本でさえ掛布氏の設定した「四番の定義」にわずかに到達していないし、阪神・大山悠輔に至っては遠く及ばない。

 掛布氏が重視するのは意外にも【3】の「四球」だ。三番打者と五番打者を生かす方法の一つに「打ちたい」欲求を我慢して、四球で出塁して打線をつなげることが重要だという。

・1985年掛布雅之(神)130試合 打率・300 40本 108打点 143安打+ 94四球=237

・2021年村上宗隆(ヤ)143試合 打率・278 39本 112打点 139安打+106四球=245

・2021年鈴木誠也(広)132試合 打率・317 38本  88打点 138安打+ 87四球=225

・2021年岡本和真(巨)143試合 打率・265 39本 113打点 138安打+ 57四球=195

・2021年大山悠輔(神)129試合 打率・260 21本  71打点 121安打+ 37四球=158

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