超巨大噴火を起こしたことのある薩摩硫黄島(鹿児島県)
超巨大噴火を起こしたことのある薩摩硫黄島(鹿児島県)

 日本には100を超える活火山がある。大なり小なり噴火のリスクを抱えているが、意外と知られていないのが超巨大噴火と呼ばれる破局的な噴火をする可能性だ。首都直下型地震よりも対策が迫られている災害だという見方もある。専門家からは「日本の1億2千万人が死ぬリスクがある」という指摘も出ている。

【表】日本で破局噴火を起こすのはどこの地域?

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 火山の歴史を1万年より前までさかのぼって調べると、恐ろしい未来が見えてきた。

「地球では(噴火の規模を表す噴火マグニチュード(噴火M)が7以上の)破局噴火を時々引き起こしてきた。日本ではこのような噴火が発生する時期も近いと考えられます」

 こう語るのは日本地震予知学会会長で、東海大海洋研究所地震予知・火山津波研究部門の長尾年恭客員教授だ。

 AERAdot.では、まず過去1万年以内の噴火の規模を調べた。産総研の「1万年噴火イベントデータ集」で調べると、噴火Mが1707年の富士山大噴火(噴火M5・26)より大きい噴火を起こした火山は、16あった。学術的に噴火M6以上は「巨大噴火」、噴火M6未満4以上は「大規模噴火」に分類されるが、富士山以外で巨大噴火した火山は3つ、大規模噴火は13もあった。

 これで驚いてはいけない、過去12万年前までさかのぼれば、噴火M7以上「超巨大噴火」と分類される噴火リスクもあるのだ。超巨大噴火は破局噴火とも言われ、ひとたびこの噴火が起きれば、広範囲に甚大な被害を引き起こすと言われる。

 一番最近に大規模噴火したのは、7300年前に起きた薩摩硫黄島での噴火だ。鬼界アカホヤ噴火とも呼ばれる。産総研のデータでは噴火Mは6・8となっているが、噴火M8・1で超巨大噴火だったという見方もある。その当時の被害を見ると、すさまじいものがある。

 薩摩硫黄島は鹿児島県沖南方50キロにある。超巨大噴火によってここに直径約20キロにもわたる「鬼界カルデラ」と呼ばれるカルデラを作られた。火砕流は海を渡り、薩摩半島や大隅半島にまで達し、南九州の広い範囲を焼き尽くしたという。降灰は東北地方にまで及び関東でも約10センチも積もったとされる。この噴火で南九州縄文人は絶滅し、南九州は1千年近く人が住めない不毛の地となったと見られている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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日本では超巨大噴火がたびたび起きていた