俳優、脚本家の佐藤二朗さん
俳優、脚本家の佐藤二朗さん

 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、「妻の残酷名言集」です。

【写真】一見の価値アリ。仏の笑顔

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担当K氏の提案でして。

「二朗さん、奥さまの残酷名言の数々を集めてみてはどうでしょう」

 今回、それ、いきます。ただ、全部を集めたら、おそらく電話帳くらいの分量になりますゆえ、まあ、ほんの、ほんの一部ではありますが、妻、いわゆるマーツーの残酷名言?迷言?をここにご紹介。

「君の顔、便器に似てるね」

 ちょっと待て。いきなり飛ばし過ぎか。いや、事実そう言われたのだから仕方がない。もはや残酷発言では生ぬるい。悪魔。悪魔的発言。

「何を着ても作業服」

「年末年始を狙った空き巣にしか見えない」

 一挙二発言。いずれも私の、わたくしめの私服に対するダメ出し。ダメ出しというか、攻撃。口撃。ほぼテロ。マーツー、悪魔かつテロリスト。

「いやだ」

 何年か前、息子が幼稚園に通ってた頃。幼稚園に行ってる間、久々にマーツーと2人きりになったので、「お父さん、お母さんじゃなくてさあ、久しぶりに、下の名前で呼び合おうか」と提案したところ、即座に提案粉砕。たった3文字で粉砕。

「頭の中、お花畑ですから」

 ドキュメンタリー番組「情熱大陸」での発言。ディレクターに、酔っ払って惚気ツイートする僕への感想を聞かれての発言。ごめんコレに関しては、事実だから何も言えまへん。

「あ?だから?」

 これも何年か前の発言。マーツーの誕生日に、「君が俺を知らずに生きてきた年数と、俺と一緒に生きた年数が、今日で同じになったね」との言葉を贈ったら、この反応。ちなみに煎をボリボリかじりながら。煎餅をボリボリかじりながら、お花畑の発言を粉砕。お花畑、わりと粉砕しがち。花、散りがち。

「我が輩は」

 このまま残酷発言を記し続けると私が吐きそうになるので、少し毛色の違う発言を。息子が4歳くらいの頃、アンパンマンごっこで、マーツーがバイキンマン役をやらされてる時の発言。もちろん正しくは「俺さまは」。ただ、あまりに渾身の、熱のこもった演技で何度も「我が輩は~!」と叫んでいたので、ついに指摘できずにアンパンマンごっこの幕は閉じた。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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