韓国のキムチづくり ※写真はイメージ(c)GettyImages
韓国のキムチづくり ※写真はイメージ(c)GettyImages

 中国の輸出制限に伴う尿素水不足で物流などへの影響が起きている韓国。11月21日、文在寅(ムンジェイン)大統領は国民からの質問に直接答える生放送のテレビ番組に出演し、尿素水不足の問題は「政府が機敏かつ迅速に対応し、問題のほとんどは解決した」と答えた。しかし、ソウル在住のフリージャーナリスト、キム・キョンチョルさんは「文大統領は自信満々に語っていましたが、まだ解決していない」と指摘する。キムさんに、韓国の今を聞いた。

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「いま韓国でみんなが困っているのは、白菜の値段がものすごく上がっていることです」

 キムさんはこう語る。韓国の家庭では11月下旬から12月上旬にかけて、1年分の白菜キムチを漬け込む一大イベント「キムジャン」が行われる。

「わが家では毎年、白菜を30本くらい買うんです。ところが、今年は秋雨の影響で品数が少ないうえに、尿素水騒動の影響でトラックの運送費が跳ね上がって、白菜の値段が例年の約2倍になっている。韓国の食卓にキムチは欠かせないですから、家計への影響は大きい」(キムさん、以下同) 

■空軍機で尿素水輸送のパフォーマンス

 中国が化学物質の一種である尿素の輸出手続きについて厳格化の方針を発表したのは9月。翌月になると、実質的に輸出が停止した。

 慌てたのは尿素を100%輸入し、そのほぼすべてを中国に頼ってきた韓国だ。

 影響が特に目立ったのは物流を担う運送業界。トラックなどのディーゼルエンジンを動かすには尿素を原料とする尿素水が必要だが、あっという間に品薄状態に陥った。価格も高騰。大勢のトラックドライバーが店頭から消えた尿素水を探し、さまよう事態となった。

「どこに行っても買えないので、海外のネット通販サイトで日本製や中国製の尿素水を買う動きがおきました。いちばん高値のときで通常の10倍くらいになった。いまは約5倍ですが、それでもかなり高い」

 今月10日、韓国政府は尿素水を緊急空輸するため、空軍の輸送機をオーストラリアに派遣した。

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文大統領の「パフォーマンス」