画像はイメージです(Getty
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 自身の国会議員としての仕事はジェンダー平等の実現だと宣言し、性暴力問題は政治が解決すべきことなんだ! と街宣の第一声で淀みなく語っていたのは、東京に限っていえば、12区の池内沙織さん(共産党)以上の人はいなかったのではないか。池内さんの街宣に行くと女性たちの熱気に圧倒されるような気持ちになった。これまで選挙にも行ったことがないという女性が、「セクハラにあい続けている、もうこの社会ムリ」と泣きながら池内さんの演説を聴いたり、「小学生の頃から痴漢にあい続けてきた」という女性が「政治で変えられることは多いはず」と国会への希望を語る姿を見てきた。池袋で行われたジェンダー街宣の時は、ライターの小川たまかさんが「(高い下駄を履いてる男性は)下駄を脱げ!」と言うと、下駄を脱げ! 下駄を脱げ! と聞いたこともないシュプレヒコールで池袋駅前が沸いたものだ。

 「ジェンダー平等」というテーマが政策の重要課題にあがることもかつてなかったが、それゆえに女性たちが熱狂的に選挙活動に参加したのも、後世からすれば歴史的な瞬間として記録されるべき選挙だったのかもしれない。残念ながら池内さんは国会に行けなかったが、「ジェンダー平等」に票を託した女性たちの熱気は消せない。東京12区の結果は公明党候補者10万1020票、維新候補者8万323票、池内さんは7万1948票だ。連合が公明党候補者の支援を明確にし、野党共闘がうまくいかず、維新の力を見くびっていた結果だろう。

 もし全国様々な選挙区でジェンダー平等を実現させよう、と本気で言い切れるような候補者がたくさんいたら、女性の候補者がたくさんいたならば……と思わずにはいられない。「ジェンダー平等」の政策では勝てないのではなく、「ジェンダー平等」政策を3番目くらいの政策にしていたから勝てなかった、という考え方もある。

 とはいえ米山氏の発言が話題になったのは、ジェンダーや環境問題を後回しにしたからではない。経済、福祉の前にジェンダー平等や環境をもってくると「余裕のある人の趣味と思われるから」と記したことである。ご本人は「自分の考えではない」と一般論で弁解するが、政治家の言葉としては残念だ。ジェンダー平等がなぜ政治が取り組むべき重要課題かといえば、それが経済、福祉、全ての政策テーマの根源に関わっている構造の問題だからだ。構造を支えているのは、性差別的法律でもある。それを変えられるのは政治家だけだからだ。

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それは経済問題よりも重要なことなのか?