さらに同記事は、このWAR以外にも考慮するべき点を指摘している。それはWPAと呼ばれる数値だ。これも先ほど同様、選手の貢献度を表す指標だが、こちらは「Win Probability Added(チームの勝利にどれだけ貢献したか)」を表している。そして、その指標によると大谷は打者としては5.1 WPA(勝利)を挙げ、メジャーで1位にランクインしている。また、投手としても2.3WPAを記録している。一方、ゲレーロJr.は3.3WPAでメジャー12位だと記事には書かれていた。つまり、大谷は一人で7.4勝をもたらし、チームに与えた影響は他の選手と比べてもかなり高いと言える。

 同記事は最後に、「ゲレーロJr.は9月に大谷とのギャップを埋めたが、大谷は今年の野球で最高の選手だった。数値の観点からも大谷はフィールド上で最も価値を生み出し、これこそ、MVPの『V(価値ある)』である」と綴られていた。

 MVPは全米野球記者協会(BWAA)が指名する各都市の記者(30人)投票で決まる。先述の『ザ・スコア』のように、各記者が投票の際に、今季の成績上の数字のみならず、前述のWARやWPAといった客観的数値を用いるのであれば、大谷の受賞はほぼ確実と言えるのではないだろうか。

 MVP投票はレギュラーシーズン終了後に締め切られているので、すでに誰に与えられるのかはおおよそ決まっているだろう。あとはその発表を待つだけだが、今季のア・リーグMVPは一体誰の手に渡るのか。11月18日の発表が楽しみだ。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)