NMB48渋谷凪咲(C)朝日新聞社
NMB48渋谷凪咲(C)朝日新聞社

 テレビの世界では、タレントたちが限られた椅子を奪い合う激しい生存競争を繰り広げている。そんなバラエティ戦線の中でも特に厳しいのが若い女性タレントの枠だ。お笑いを専門にする女性芸人たちも同じようなところで戦っているため、芸人並みの頭の回転の速さがなければ生き残ることはできない。

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 池田美優(みちょぱ)、指原莉乃、朝日奈央、ファーストサマーウイカなど、いま最前線に立っているのはそんな血みどろの戦いをくぐり抜けてきた歴戦の勇士ばかりだ。

 そんな若い女性タレント戦線で今にわかに脚光を浴びているのが渋谷凪咲である。彼女は関西を拠点にするアイドルグループ「NMB48」の一員である。

 主に関西ローカルのバラエティ番組で活躍していたのだが、最近では『トリニクって何の肉!?』など全国ネットの番組でも見かける機会が増えてきた。今年の10月には初の冠番組となる『~凪咲と芸人~マッチング』も始まった。この番組では、渋谷がさまざまな芸人をゲストに迎えて、東京での相棒を探すというのがコンセプトになっている。

 渋谷は、母親の影響で昔からお笑いが好きだった。特に、ダイアンに関しては一番好きな芸人だと語っており、「お笑いの完全体」と評価している。お笑いが好きな女性アイドルというのはそこまで珍しいわけではないが、彼女の場合、そのお笑い能力の高さも評判になっているというところが新しい。

 特に、芸人からの評価は高く、今年3月放送の『アメトーーク!』では麒麟の川島明に「大喜利が面白い」と紹介された。この時点ではまだ渋谷の全国的な知名度はそれほど高くなかったのだが、その頃からどんどん全国ネットの番組に出るようになっていった。

 もともと大阪では芸人と共演する機会も多く、かまいたち、見取り図、ダイアンなどの人気芸人とも親しい関係にある。共演する芸人たちは誰もが渋谷の実力を認めている。

 プロの芸人が「大喜利が面白い」とその実力を褒め称える女性アイドルというのは、ありそうでなかった独特のポジションだ。基本的に、芸人というのは人一倍お笑いを見る目がシビアな人種である。そんな彼らは芸人以外の人に対して気安く「大喜利が面白い」などと言うことはない。つまり、そう言われる渋谷の実力は紛れもない本物なのだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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