「オケをバックに演奏するのとかもいいですね」。今後もジャンルにとらわれずいろんな音楽をやっていきたいと語る(撮影/写真部・松永卓也、hair&make up/DAISAKU MUKAI)
「オケをバックに演奏するのとかもいいですね」。今後もジャンルにとらわれずいろんな音楽をやっていきたいと語る(撮影/写真部・松永卓也、hair&make up/DAISAKU MUKAI)

 最初はTikTok用にサビのパート(19秒)だけを制作。最初の段階では「レコード会社の人も“もうちょっと数字が伸びたら、フルバージョンを作ろうか”と様子を見てました(笑)」という状況だったが、「なにやってもうまくいかない」はその後も順調に拡散され、今年9月に正式にフルバージョンが配信リリースされた。

 YouTubeで公開されたMVもわずか1カ月で550万回に迫る再生数を記録。リスナーからは「俺も音楽で頑張って努力して音楽で食べていけるくらいにはなりたい」「みんなでこの曲聞いて、現代社会乗り越えようぜ」など、それぞれの境遇と重ねたコメントも数多く寄せられている。

■話題性だけでは終わらない、楽曲のクオリティの高さ

 ストレス発散になる楽曲が求められる時代背景、“何をやっても上手くいかなかった”アラサーのミュージシャンのリアルな感情表現など、さまざまな要素が絡み合って話題を集めている「なにやってもうまくいかない」。この曲がヒットしたもっとも大きな理由はやはり、楽曲自体のクオリティの高さだと思う。ノリやすいビートとファンキーなベースライン(ベースの演奏はサカナクションの草刈愛美が担当)。そして、一度聴いたら耳から離れないメロディと、自虐と承認欲求がこんがらがった歌詞。この曲には、10数年の音楽活動のなかで得たものがバランスよく込められている。00年代の邦ロックやボカロ系など、幅広い音楽の要素が反映されていることも、多くのリスナーの興味を引いている要因だろう。

 アーティストとしての未来が大きく開こうとしているmeiyo。10数年に及ぶ下積み時代を乗り越えられた理由を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「いちばんはずっと応援してくれている人、関わってくれたスタッフが“音楽をやめてはいけない”と言い続けてくれたこと。僕も“自信を持って提供できるのは音楽しかない”と思っていたし、じつは“曲がダメだから売れないんだ”と考えたことは1回もないんです。まあ、そう思っていないと精神的にヤバくなるという恐怖心もありましたけどね(笑)」

(森 朋之)

■「meiyo」(メイヨー)/日本の音楽家。2018年に演奏/歌唱/作詞/作編曲を行う「ワタナベタカシ」から「meiyo」へと改名し、新たな活動をスタート。2021年に開設したTikTokアカウントにオリジナル曲「なにやってもうまくいかない」を投稿したところ大きな反響に。この楽曲を使った投稿は4.9万件を超えTikTok内急上昇チャートで1位を獲得するほど話題を生んだ。中毒者が急増中の今注目のアーティスト。

次のページ
中毒者続出!「なにやってもうまくいかない」動画はこちら