撮影:赤鹿麻耶
撮影:赤鹿麻耶

■撮った写真を分析する

 赤鹿さんのアトリエは物であふれている。そこから、「今日はこれとこれの組み合わせで、という感じで物を選び、作品をつくっていく」。

 一方、スナップショットの作品は、「ふつうの撮り方。思うままに街を歩いて、気になったものを撮る」。

 ふつうと違うのは撮影後で、「まず、撮った写真の分析から始めます」。

「何か興味があって撮るわけですけど、『なぜ、それをいいと思ったのか?』『なぜ、ときめいたのか?』、しっかりと探りながら選んでいく」

 写真の選びが終わったら、残ったものをさらに2つ分ける。

「作品として展示できる写真と、次の作品をつくるための資料写真。その見極めをきちっとしないと、自分にとっての『よい写真』が分からなくなる」

 いつも、「よい写真」にたどり着くための「実験中」という感じだそうで、「いい写真だな、と思えるものが実は何なのか、私自身にも見えてない、というのが、ほんとうのところ。だから、考えるのにけっこう時間がかかる。自分でも、何をやっているのかな、と思っちゃうんですけど」。

 その過程で大切にしているのが、感じたことを言葉にする「言語化」だ。

■言語化したイメージが現実にあった

「新しい写真を見たときに、いままでになかった感覚を覚えたり、何か変な感じがする。それを、時間をかけて探っていき、言語化する。そうすることで自分が求めているものを明確にする」

撮影:赤鹿麻耶
撮影:赤鹿麻耶

 展示作品のなかに台湾で写した黄色いユリが咲き誇る幻想的な写真がある。

「このとき、どうしたら夢に近づける写真をつくれるのか、悩んでいたんです。その前に日本で『景色が自分のものになる日』というタイトルの1枚をつくり終えていた。で、台湾に出かけた際、ここ訪れると、みんながスマホで花畑をバックに撮影していた。これこそが『景色が自分のものになる日』だと思った。自分でがんばってつくり込もうとしていたものが、わりと簡単に現実世界で見つかった。その驚き。自分でイメージして、その言葉さえ持っていたら、それと重なる景色に出合えるんだ、と思った」

 ちなみに、自分が「作家」だということはあまり意識していないそうで、「自分が楽しいと思える写真をつくりたい。そこしか意識していないです」。

「そんなわけで、最近の作品はどんどんよくわからなくなっていく(笑)」

アサヒカメラ・米倉昭仁)

【MEMO】赤鹿麻耶写真展「ときめきのテレパシー」
キヤノンギャラリー S(東京・品川) 10月14日~11月24日