現役引退発表後、報道陣の囲み取材に応じる日本ハムの斎藤佑樹(c)朝日新聞社
現役引退発表後、報道陣の囲み取材に応じる日本ハムの斎藤佑樹(c)朝日新聞社

 感動的な光景だった。

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 日本ハム・斎藤佑樹の引退登板となった3日のイースタン・DeNA戦。6回からマウンドに上がった斎藤に、一塁の清宮幸太郎が駆け寄り話しかけた。清宮は目に涙をため、斎藤は笑みを浮かべた。今年は実戦で120キロ後半しか出なかった直球が130キロ台を計測。故障で体がボロボロだった斎藤が見せた最後の意地だった。DeNA・乙坂智を5球目の132キロで空振り三振。斎藤は涙をぬぐうと、穏やかな笑顔を浮かべた。報道によると、登板直前に清宮は「楽しんで投げてください」と斎藤に話しかけた。その理由について、「野球は結果に追われるスポーツなので、最後くらい楽しんでほしいと思った」と明かしたという。

 「清宮は斎藤の最後の勇姿を見て、色々な思いが込み上げてきたと思います。斎藤に憧れて野球を始めて、後を追いかけるように早実に入っています。年齢は11歳離れていますが、清宮は斎藤に無邪気に甘えたり笑顔で話したり、仲の良い兄弟のような関係だった。斎藤はプロで結果を残せずユニフォームを脱ぐことになりましたが、度重なる故障をしてもリハビリを一生懸命して、パフォーマンスを上げるために新たな練習を積極的に取り入れていました。18年以降未勝利に終わりましたが、現役後半は野球に対する姿勢が明らかに変わった。結果は出ませんでしたが、清宮もその姿は見てきました。今までも当然一生懸命やってきたと思いますが、斎藤の引退でより一層危機感が芽生えたと思います。覚醒のきっかけにしてほしいですね」(スポーツ紙記者)

  共に早実出身でアマチュア時代にスターとして注目され、ドラフト1位で入団した。ただ注目度の度合いで言えば、斎藤はケタ違いだった。早実で2006年夏の甲子園、決勝再試合の末に駒大苫小牧高・田中将大(現楽天)との投げ合いを制して全国制覇を達成。マウンド上で汗を拭くためにタオルを取り出す姿が話題を呼び、「ハンカチ王子」の異名で社会現象になった。早大に進学すると六大学史上6人目の通算30勝、300奪三振を達成。4球団競合のドラフト1位で日本ハムに入団したが、新人の11年に挙げた6勝が自己最多とプロの世界は厳しかった。

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