作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、眞子さま結婚について。


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 小室圭さんのロン毛を見て、いろんなことがストンと胸に落ちた。

【写真】あっ、カモを落としちゃった!大慌ての眞子さまの「失敗」

長髪姿の小室圭さん(c)朝日新聞社
長髪姿の小室圭さん(c)朝日新聞社
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  日本中が好奇の目を向けている中でのロン毛での帰国は、小室さんの圧勝が決まった瞬間のように見えた。多くの人の想定を超える空気の読めなさと(誰が小室さんがロン毛で帰国することを予想できただろう)、垣間見える尋常ではない深く強い自己肯定感。こういう人でなければ、何の後ろ盾もない一般男性が皇室の女性にプロポーズするなど、無理なことなのだと理解した。

婚約内定の際の会見のお2人(c)朝日新聞社
婚約内定の際の会見のお2人(c)朝日新聞社

 おそらく眞子内親王には、それが分かっていたのではないだろうか。もう二度と、こんな男性は現れない、恋愛感情がいつか終わることなど百も承知、賛成されていないのも百も承知、とんでもない間違いを犯している可能性も百も承知、耳に入れたくない「言いたい放題」があることなど眞子内親王自身が百も承知だろう。それでもこの機会を逃したら一生ここから出る機会はないに等しい。出られたとしても、もうそれは10年、20年後のことかもしれない。少なくとも眞子内親王と恋愛し、無謀とも思えるプロポーズをするような2人目の「一般男性」が現れる可能性は限りなく低いだろう。「生きていくために必要な選択」というのは、眞子内親王にとって大げさでない真理なのだ。

 改めて、皇室の女性たちが置かれている特殊で残酷な環境に思いを馳せずにはいられない。日本のプリンセスは結婚したとたんに「一般人」にならなければいけないという、女性だけに科せられた罰のような制度がある。罰のような制度にもかかわらず、女性が皇室にとどまることは“空気”として許されていない。とはいえ一人で勝手に出ていくことはできず、現実的には男性と結婚することで出ていかねばならない。


 そのような現在の皇室そのものが性差別も甚だしい前近代的な制度であるにもかかわらず、「皇室は特別ですから」と放置され続けてきた。眞子内親王の結婚をめぐるさまざまな事柄が私たちに見せたのは、皇室の女性たちが強いられる制限が、もはや人権問題の域に入っていることなのかもしれない。東京のど真ん中に、憲法24条が無効の性差別が横行している巨大な村があるようなものだ。その村から女が自力で出るためには結婚という方法しかなく、その自力すら認められるのは非常に難しい。

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自分の人生を眞子さまの人生を重ねる女性たち