19年の8月に国内FA権を獲得したが、シーズン終了後に自由契約公示されソフトバンクに移籍。2年総額10億円ともいわれる高額契約を結んだ。しかし移籍1年目はわずか60試合の出場で9本塁打22打点とまったくの期待外れ。今季もここまで22試合のみの出場で、4本塁打、9打点と不振が続き二軍での調整が続いている。

「常勝ソフトバンクは大人の戦う集団。明るい雰囲気ですが野球に関してはストイックで一枚岩。ヤクルトはファミリー球団と言われますが、言い方を変えれば緩い部分が多い。バレンティンは打撃で結果を残していたからワガママが許された。特権が奪われストレスも溜まっていた。完全にやる気を失っており復活は厳しいでしょうね」(ソフトバンク担当記者)

 ヤクルト在籍8年間でリーグ優勝は1度(Aクラスは4度)。本塁打の記録樹立など、バットマンとして多くの勲章を手に入れたバレンティンにとって残すはチームとしての頂である日本シリーズ制覇だった。ソフトバンク移籍で最短ルートに乗ったかのように見えたが歯車は大きく狂った。日本一へのモチベーションを失い、今では選手生活晩年をのんびり過ごしたがっているようだ。

「ソフトバンクとの破格契約など、お金はかなり稼いだ。日本一への気持ちがなくなったので居心地良いヤクルト復帰を望んでいるのでしょうが、可能性は低い。ヤクルトは勝てるチームへ変貌を遂げつつある。ベテランと若手のバランスが良く、勝利への執念も生まれ始めている。かつての功労者とはいえ、ワガママ三昧の選手をいまさら獲得することは考えられない。他に手を上げる球団がなければ引退かもしれません」(在京球団編成担当)

 13年オフ、故郷オランダ領キュラソー島は英雄の凱旋帰国を熱狂で迎えた。本塁打記録達成を祝って命名された「ココ・バレンティン通り」でのパレードには、島民人口14万人を超える人々が集結した。時は流れ、あの時の熱狂は遠い彼方へ忘れ去られてしまった感もある。球史に残る記録を樹立した強打者の行く末はどうなるのか。このまま静かに引退するのは少し寂しい気もする。