政府分科会の尾身茂会長(左)と西村新型コロナウイルス対策担当相(c)朝日新聞社
政府分科会の尾身茂会長(左)と西村新型コロナウイルス対策担当相(c)朝日新聞社

「尾身さんが政治家になっちゃった」

【独自】尾身会長の傘下にある東京都内の公的病院のコロナ病床数はコチラ

 社会学者の古市憲寿さんの発言だ。8月26日の「めざまし8」(フジテレビ系)で、新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長が国会でバッハ会長の再来日を「なんでわざわざ来るのか」などと強烈に批判したことに対して語った。尾身会長の批判はSNSなどで「よく言った」などと賛同の声もあったが、古市氏のように違和感を覚える人もいたようだ。

 政府関係者がこう話す。

「専門家が専門的知見に基づき発言するのは当然なのですが、国会の場などで、個人的な思いを連発するのは、政治家、権力者気取りで、道を間違え始めたかなと思います。尾身さんは頻繁に西村さん(新型コロナウイルス対策担当相)と大臣室などで意見交換をしています。しかし、最近はなぜか西村さんがレクをし、それを受けて尾身会長が『とにかく国民の行動をとめるんだ』『新しい社会をつくるんだ』と指示を飛ばす“珍構図”となっています」

 指示を実質的に出しているのは、西村大臣ではなく、尾身会長だというのだ。

「西村大臣が意に沿わない意見を言えば、『国会で言うよ』を連発し、黙らせています。もともと権力志向の強い方なので、素が出ただけなのかもしれません」(同前)

 しかし、尾身会長が檄を飛ばしても、全国で新型コロナウイルスの新規感染者、重症者は増加の一途を辿り、全国で約11万人の自宅療養者があふれている。世論の厳しい目は、尾身会長が理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)にも向けられている。

 JCHOは厚生労働省が所管する独立行政法人で、旧社会保険庁所管の病院など公的医療機関が傘下に入る。尾身会長は厚労省OBだ。

 東京都内では27日、新たに4227人の新規感染者が確認され、重症患者は過去最多の294人、18人が死亡と第5波で最も多くなった。医療現場がひっ迫する中、問題化しているのが、JCHO傘下の都内の病院のコロナ病床の数だ。

 AERAdot.編集部が厚労省関係者より入手した資料によると、JCHO傘下にある都内5病院(東京新宿メディカルセンター、東京高輪病院、東京蒲田医療センター、東京山手メディカルセンター、東京城東病院)の総病床数は1532床だが、新型コロナ患者用に確保された病床は183床で1割強だ。そのうち重症病床はわずか6床だ。(27日現在の登録数)。

 こうした病床逼迫を受け、田村厚生労働相と東京都の小池百合子知事が改正感染症法に基づいてJCHOなど医療機関に病床確保を要請。JCHOが東京城東病院を9月下旬からコロナ患者の専門病院とすることを決めたと読売新聞(28日付)で報じている。今後は数十人規模でのコロナ患者の受け入れを検討するという。

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら
次のページ
なぜコロナ病床が少ないのか