都は今年1月、都立広尾、公社荏原、公社豊島の3病院でそれぞれ240床を新型コロナ専用とした。総病床数の5割強にあたり、新型コロナ対応の専門病院となっている。渋谷区の東海大学医学部付属東京病院も昨年、99床のうち60床を新型コロナ専用にし、専門病院になっている。厚労省関係者はこういう。

「尾身会長は『JCHOは最大限やっている』と言っていますが、実際は公的病院の中でも患者受入の消極さが際立っている。『医療逼迫(ひっぱく)の危機』を国会で声高に叫ぶ前に、尾身会長があと数割でもコロナ病床に振り向けるようにもっと早く指示してくれたら、それこそ多くの命が救えると思うのですが…」

 なぜこんなに少ないのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏はこう指摘する。

「本来であればJCHOなどの公的な病院が新型コロナ患者専用の病床を率先して確保する話です。経営が苦しい民間にちょっとずつ押し付けるのは一番やってはいけない。コロナの病床に変えるというのは医者の配置を変えたり、病床を隔離するなど大変なことです。これを避けているのでしょう」

 尾身会長は連日、国会やメディアなどで「人流、人々の接触を減らす対策をもう少し強くやる必要がある」、「病床の逼迫が大変なことになる」と繰り返し訴えている。

 その一方で尾身会長は「人々の行動制限だけに頼る時代は終わりつつある」(7月15日)とも主張し、科学技術の分野に予算を投じる必要性があると踏み込んだ発言をしている。

 尾身会長は現在、DeNAとLINEらと一緒にQRコードを使った新型コロナ感染者の追跡システムにご執心なのだ。尾身会長と厚労省医系技官出身のDeNA幹部が一緒にQRコードを利用したシステム導入に関し、西村大臣に“直談判”していたことは、AERAdot.で既報(6月19日配信)している。

 その甲斐あって新型コロナウイルス感染症対策本部が8月25日、公表した「基本的対処方針」には以下のように記されている。

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開発業者との距離の近さにも疑問の声が