同社によると鍜治さんは晩年、「『数独の父』では死にたくない。死んだときに『日本でパズルというジャンルを確立させた』と書かれたい。今死ぬと『数独の父』になってしまうから、もっとパズルの楽しさを広めたい」と、パズル普及へのさらなる意欲を語っていたという。

■世界中にパズルの面白さ

 40年近く続けてきた社長業を、今年7月末で退任し、後進に道を譲っていた。

 安福良直・ニコリ代表取締役社長は、

「鍜治さんは数独ブームのおかげで、『Godfather of Sudoku』と呼ばれ、世界中を駆け回る日々が数年続きました。外国語は話せずとも、だれとでも打ち解けてしまう性格で世界中に友人を作り、行く先々でパズルの面白さを広めました。鍜治さんは、『ニコリのパズルを世界に広げる』ことを目標に掲げ、まだ新しいパズルビジネスを発展させることを夢見ていました。これらの可能性を追い求め、広げていくことが、私たちの使命と考えております」

 と、コメントした。

 パズルをどこまでも愛し、世界中にその楽しさを伝えて、鍜治さんは旅立った。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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