テスラは米テキサス州オースチンにもギガファクトリーの建設を進めている。そもそも、自動車メーカーが自ら巨大電池工場を建てること自体、前例がなかった。

 さて、地球温暖化を食い止めるために世界のガソリン車をすべてEVに変えることを目指すイーロン・マスクは、「年間20テラワット時のバッテリー生産能力が必要だ」と公言している。これは1億台のEVに相当する値だ。そして、バッテリーコストが1キロワット時当たり100ドルを下回るようになれば、ガソリン車を打ち負かせると自信を見せる。

■欧州でのギガファクトリー建設ラッシュの裏の事情

「EVの出荷能力は、リチウムイオン電池の生産数量で決まる」とイーロン・マスクは常々言っていた。その言葉に倣うように、いまや欧州ではリチウムイオン電池の巨大工場「ギガファクトリー」の建設ラッシュに沸いている。

 英国では電池メーカー「AMTEパワー社」が新興企業「ブリティッシュボルト社」と共同でテスラ級のリチウムイオン電池工場を英国に建設すると2020年5月に発表した。予定投資額は約5200億円億円で、年間生産能力は30ギガワット時。4000人の雇用計画に英国ジョンソン首相は破顔したという。

 フランスではプジョーなどを傘下に持つ「グループPSA(現・ステランティス)」が電池メーカー「サフト社」との合弁で、フランスとドイツにそれぞれ24ギガワット時のギガファクトリーを建設する。

 スウェーデンではノースボルト社が30億ドル(約3300億円)を投じて、水力発電を利用したギガファクトリーを建設中で、2024年までに年間32ギガワット時、将来的には40ギガワット時のリチウムイオン電池生産を計画している。

 そして、独フォルクスワーゲン(VW)は前出のノースボルト社と共同で、ドイツなど欧州の6箇所でギガファクトリー建設を推進し、年間総量240ギガワット時のバッテリー生産を目指す。50%のバッテリーコストダウンを実現し、2025年までにEV年間生産能力を150万台に引き上げると野心的だ。

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2035年の欧州─―EVとFCVしか販売できなくなる日